トレーニング頻度が女性高齢者の筋トレ効果に及ぼす影響

2021年6月8日

はじめに

一般的に、レジスタンストレーニングを行う主な目的は筋力向上、身体組成の改善(筋肉量増加、体脂肪量減少)です。

レジスタンストレーニングの効果は、重量、種目、筋収縮時間、セット間の休息時間、週当たりの実施セット数、週当たりの実施頻度といった様々な変数による影響を受けます。
また、その変数の振る舞いは、対象者の特性(初心者、経験者、有酸素性トレーニングの実施有無、若年者、高齢者など)によっても変化します。

今回は、女性高齢者を対象としてトレーニング頻度(週当たりの実施回数)が筋力と身体組成に及ぼす影響を検証した論文を紹介します。

論文概要

出典

Pina, F., Nunes, J. P., Schoenfeld, B. J., Nascimento, M. A., Gerage, A. M., Januário, R., Carneiro, N. H., Cyrino, E. S., & Oliveira, A. R. (2020). Effects of Different Weekly Sets-Equated Resistance Training Frequencies on Muscular Strength, Muscle Mass, and Body Fat in Older Women. Journal of strength and conditioning research, 34(10), 2990–2995. https://doi.org/10.1519/JSC.0000000000003130

方法
60歳以上の47名の女性高齢者をランダムに下記の2群に分類
・週2回実施群(毎週火・木曜日)
・週3回実施群(毎週月・水・金曜日)

トレーニングの詳細は下記のとおり
期間:12週間
実施種目:バーティカルチェストプレス、ニーエクステンション、ラットプルダウン、レッグカール、プレーチャースコットカール、シーアッドカーフレイズ、トライセップスプッシュダウン、アブドミナルトランクフレクション
セット数:週2回実施群は3セット、週3回実施群は2セット
反復回数(強度):シーアッドカーフレイズは15-20RM、アブドミナルトランクフレクションは20-30回(自重のみ)、それ以外は10-15RM
休息時間:セット間は1-2分、種目間は2-3分
収縮時間比:1対2(短縮性収縮/伸張性収縮)
負荷の漸増:上肢種目は2-5%/週、下肢種目は5-10%/週の割合で増加

トレーニング期間の前後に1RM挙上重量(チェストプレス、ニーエクステンション)と身体組成(二重エネルギーX線吸収測定法)を測定

結果
・1RMの挙上重量は両群ともに同程度増加
週2回実施群:チェストプレス+3.38kg、ニーエクステンション+4.07kg
週3回実施群:チェストプレス+3.31kg、ニーエクステンション+2.65kg

・除脂肪体重は両群ともに同程度増加
週2回実施群:+0.64kg
週3回実施群:+0.59kg

・体脂肪量は週3回実施群のみ減少
週2回実施群:-0.16kg
週3回実施群:-0.74kg

※数値は調整後平均差

解説

この論文は、女性高齢者を対象に異なる頻度(週2回vs週3回)で12週間にわたりレジスタンストレーニングを実施した際の最大筋力・身体組成への影響を検証しています。

この論文の長所は、セット数を週2回実施群では3セット、週3回実施群では2セットとすることで、トレーニング効果に大きく影響する変数である総量(ボリューム)を揃えていることです。
このアプローチをとることで、頻度の影響をより妥当に検証できると考えられます。
得られた結果は、筋力や筋肉量を高めるためには週2回でも3回でも同じぐらいの効果が期待できる一方、体脂肪の減少は週3回実施した方が高い効果が見込めることを示唆しています。

総量(ボリューム)、すなわち運動量が同等ということを踏まえると、週3回実施群で体脂肪の減少が認められた理由は運動量以外の要因となります。
考えられる要因としては、より高頻度で実施したことによって、運動後過剰酸素消費量と呼ばれる運動後の代謝の高まっている時間が多かった可能性が挙げられますが、詳細は不明です。

この論文を現場に応用すると、高頻度でトレーニングを組める人は1回のセット数を減らし週当たりの実施回数を増やすアプローチ、あまりジムに通う日を確保できない人は、1回のセット数を増やし、週当たりの実施回数を減らすというように、個々の生活環境に応じて実施頻度や1回のセット数を決めるべき、ということが言えます。

まとめ

女性高齢者が体脂肪を減らすことを目的とした場合の筋トレは週2回よりも週3回