夜に持久系運動をする場合、昼食から何も食べない方が良いのか?

はじめに

脂質代謝向上を目的として、朝食前の空腹絶食状態での運動が推奨されることがあります。
その理由は、前日の夕食後から続く絶食状態によって、脂質代謝が亢進した状態で運動ができるからです。

絶食状態と絶食なし状態での持久系運動を比較すると、絶食状態では脂質代謝が亢進するものの、エネルギー消費量は高くなるわけではありません。
したがって、絶食状態の運動に体重減少の追加的な利益があるわけではありません。
しかし、朝食を食べずに運動をした場合には、結果的に1日を通したエネルギー摂取量を抑えることにつながる可能性があります。

今回紹介する論文では、朝ではなく、夜の持久系運動を対象としています。
紹介する論文では、18時30分からの持久系運動を行う場合に、昼食(11時30分)以降何も食べない場合と運動の2時間前(16時30分)に軽食を摂る場合で、運動パフォーマンス、夕食のエネルギー摂取量、食欲などを比較しています。

論文概要

出典

Slater, T., Mode, W. J. A., Pinkney, M. G., Hough, J., James, R. M., Sale, C., James, L. J., & Clayton, D. J. (2022). Fasting Before Evening Exercise Reduces Net Energy Intake and Increases Fat Oxidation, but Impairs Performance in Healthy Males and Females. International journal of sport nutrition and exercise metabolism, 33(1), 11–22. https://doi.org/10.1123/ijsnem.2022-0132

方法
16名のレクリエーショナリーに活動的な男女(各8名)を対象
予備実験後に次の2条件をランダムに実施
間食あり条件(Feeding: FED)
間食なし条件(Fasting: FAST)

実験の前日の夕食、当日の朝食(平均543kcal)、昼食(11時30分、平均814kcal)、軽食(16時30分、FED条件のみ、平均543kcal)の内容は推定安静時代謝率や身体活動レベルをもとに決定
水分摂取量は体重をもとに対象者ごとにコントロール

持久系運動後の夕食は運動終了15分後から20分間摂取
パスタ、トマトソース、オリーブオイルで構成された食事(糖質69%、タンパク質11%、脂質18%、食物繊維2%)を満足したと感じるまで摂取

持久系運動は主観的指標の調査と20分間の安静状態確保後に18時30分から開始
30分@一定強度サイクリング(60%VO2peak)+15分@オールアウトパフォーマンステスト
安静状態、一定強度サイクリングの呼気ガスを測定
運動後にも主観的調査を実施

結果
※数値は平均値

運動後の夕食のエネルギー摂取量はFASTで多い(+99kcal)ものの、1日を通したエネルギー摂取量はFASTで少ない(-443kcal)
運動後の夕食のエネルギー摂取量は性別と条件の交互作用があり、男性ではFASTで増加(203kcal)したものの、女性では変化がなかった(-5kcal)

空腹、食べたい欲求、将来の食事摂取量といった主観的指標は16時30分-19時30分でFASTが高かった

FASTは安静時の糖質酸化量、エネルギー消費量が低く、脂質酸化量が高かった
FASTは一定強度運動時の糖質酸化量、エネルギー消費量が低く、脂質酸化量が高かった

FASTは15分の運動パフォーマンスが低かった

FASTは運動前のモチベーションやエネルギー、運動へのレディネスが低かった
運動後の調査からFASTは運動を楽しく感じていない傾向があった

解説

この論文は、夜に持久系運動をする場合、昼食から何も食べない状態の条件と運動の2時間前に550kcal程度の食事をとった条件でエネルギー代謝や運動パフォーマンス、主観的指標、その後の食事量を比較しています。

得られた結果は、昼食後に何も食べないで運動する場合、その後の夕食量が多くなるものの、運動前に食べた量を完全補償するまでには至らないため、1日を通したエネルギー摂取量を抑えるためにはプラスに働きました。

一方、運動パフォーマンスや運動へのモチベーション、運動前の空腹感などを踏まえると、間食をとった方がプラスの影響がありました。
したがって、運動を継続するには、昼と夜の運動の間に何かしらの軽食をとった方が有益な可能性もありそうです。

絶食状態での運動は脂質を積極的に利用できるため、健康上の利益があると言われています。
しかし、一口に絶食といっても、絶食時間、絶食前の食事量などによっても効果の程度が異なります。
この論文は、早朝空腹時という一般的な実験条件と比較していないため、FASTがどれほど効果的だったのかは解釈しにくいです。
また、間食に比較的沢山のエネルギーをとっていたため、プロテインバー(約200kcal)などの軽食の場合にはどういった結果になるのかも気になります。

いずれにしても、体重を落としたい人は、1日を通したエネルギー出納をどうやったらマイナスに出来るのかを第一に、自分に合った続けられるアプローチをとることが大切になりそうです。

まとめ

昼食から7時間絶食で持久系運動をすると脂質代謝は亢進するが、運動パフォーマンスは落ちる