マラソン大会前日の糖質摂取は最低でも体重1kg当たり7g

2024年1月6日

はじめに

以前、市民ランナーを対象として、レース直前からレース中にかけて科学的エビデンスに基づいた栄養補給戦略を実施することで、マラソンパフォーマンスが向上する可能性を示した研究を紹介しました。

フルマラソンのタイムを縮める科学的栄養補給戦略

マラソンの栄養補給戦略について考える場合、レースの前日までに行うカーボローディング(グリコーゲンローディング)も重要です。
カーボローディングとは、長距離ランナーなどのアスリートが、競技直前に炭水化物を摂取して体内のグリコーゲンを最大限に増やすことを指します。

今回紹介する論文では、市民ランナーを対象として、レース前日の糖質摂取量がマラソンパフォーマンスと密接な関係を持つことを報告しています。

論文概要

出典

Atkinson, G., Taylor, C. E., Morgan, N., Ormond, L. R., & Wallis, G. A. (2011). Pre-race dietary carbohydrate intake can independently influence sub-elite marathon running performance. International journal of sports medicine, 32(8), 611–617. https://doi.org/10.1055/s-0031-1273739

方法
人体計測的・トレーニング学的・栄養学的な要因とマラソンパフォーマンスとの関係を調査することを目的とした調査研究

2009年のロンドンマラソンの出場者257名(平均年齢39歳、平均完走時間:273.8分)を対象

インターネットベースの調査によって、人体計測的、トレーニング的、栄養学的なデータを定量

栄養学的なデータはレース前日の24時間にわたって摂取された全飲食物(レース前)、レース当日の朝食(朝食)、レース中の情報を収集
収集された情報は、食事日誌分析の経験を持つ栄養士が独立して分析

多変量統計手法を使用して、各共変量を制御した上で分析

結果
ステップワイズ回帰分析
性別、BMI、最長距離、5週間前の走行距離、2週間前の走行距離、レース前日の糖質摂取量がマラソンのパフォーマンス(ランニングスピード)と関係
→パフォーマンスの56%を説明可能

共変量調整分析
レース前日に体重1kg当たり7gを超える糖質を摂取したランナーは、平均ランニングスピードが高く、後半もスピードを維持できていた

解説

この論文は、平均完走時間が4時間30分のランナーを対象として、レース前日の糖質摂取量がマラソンのパフォーマンスと密接な関係があることを明らかにしました。

本文を確認すると、対象者の完走時間は2時間43分から7時間20分までの範囲でした。
したがって、対象者は非常に幅広く、異質な集団であったと言えます。
異質な集団を対象とする際、BMIや練習量などがパフォーマンスに著しい影響を与えます。
そこで、論文の著者は共変量をコントロールした統計分析を行い、7g/kg以上の糖質摂取がパフォーマンスに有益である結果が他の要因(BMI、トレーニングなど)の違いによって説明される可能性が低いことを示しています。

糖質摂取の適正量は個々のトレーニング量などに依存しますが、最低でも7g/kgというのはザックリとはしていますが、妥当なラインと言えるのかもしれません。

まとめ

マラソンのパフォーマンスは、性別、BMI、トレーニングに加えて、レース前日の糖質摂取量が影響する