スポーツタイプ別の年齢と身体組成、筋力との関係

はじめに

加齢に伴う体力低下を完全に防ぐことはできませんが、積極的なスポーツ活動を行うことで、多少なりとも抗うことが出来ます。

また、一口にスポーツ活動と言っても、筋肥大や筋力強化を目的としたウエイトトレーニングと全身持久力向上を目的とした有酸素トレーニングとでは、得られる効果は異なります。

今回紹介する論文では、35~60歳の男性を対象として、筋トレ愛好家、長距離ランナー、セデンタリー(スポーツ活動を習慣的に実施していない)の3群に分けた上で、身体組成、筋力、生活の質(Quality of life)を調査しています。

論文概要

出典

Latorre-Román, P. Á., Izquierdo-Sánchez, J. M., Salas-Sánchez, J., & García-Pinillos, F. (2015). Comparative analysis between two models of active aging and its influence on body composition, strength levels and quality of life: long-distance runners versus bodybuilders practitioners. Nutricion hospitalaria, 31(4), 1717–1725. https://doi.org/10.3305/nh.2015.31.4.8479

方法
スペインのアンダルシア州の35-60歳の男性148名を対象
日々のスポーツ活動の有無やその内容をもとに下記の3群に分類
長距離走群(53名)
筋トレ愛好家群(50名)
セデンタリー群(45名)

測定項目は下記のとおり
・体重、体脂肪率、骨格筋量、身長、BMI
→インピーダンス法(In Body R20)など

・握力

・垂直跳びの跳躍高

・生活の質
→Healthy Survey Short-Form 36(SF-36)

結果
BMIと体脂肪率
長距離走群が他の2群に比べて低い

骨格筋量
筋トレ愛好家群が他の2群に比べて高い

垂直跳びの跳躍高
長距離走群と筋トレ愛好家群がセデンタリー群に比べて高い

年齢が身体組成に及ぼす影響を調べると・・・
骨格筋量は全グループで年齢が高くなると減少
体脂肪率はセデンタリー群で年齢が高くなると増加
握力は長距離走群で年齢が高くなると減少
垂直跳びの跳躍高はセデンタリー群で年齢が高くなると低下

SF-36
長距離走群のPhysical functionはセデンタリー群に比べて高い
長距離走群のGeneral Health、Vitality、Social function、Mental Healthは他の2群に比べて高い
長距離走群のEmotional roleは筋トレ愛好家群より高い

解説

この論文は、マスター年代の男性のスポーツ活動の有無や違いに着目して身体組成や体力などを比較した結果、日頃有酸素トレーニングを行っている長距離走群が全体的に優れている傾向を明らかにしました(BMIや体脂肪率からみた身体組成に優れ、SF-36の結果も良好)。

ただし、骨格筋量は筋トレ愛好家群で高く、長距離走群はセデンタリー群と変わりませんでした。
したがって、長距離走群は骨格筋量を高めるような運動刺激も行うことが出来れば、健康度をより高められると言えそうです。

時間の制約や好みなどの影響で両方のトレーニングを満遍なく実施できる人は少数派な気がしますが、「体脂肪率の増加を防ぐための有酸素トレーニング」と「筋肉量の低下を防ぐための筋力トレーニング」を並行実施することが、健康的には違いありません。

まとめ

筋肉量の低下を防ぐには、有酸素トレーニングでは不十分