総合格闘技の水抜きに男女差があるのか?

はじめに

総合格闘技(MMA)は、他のスポーツと同様に男女別に試合が組まれています。
また、MMAは階級制度が採用されており、ほとんどの競技団体では試合前日に計量が行われます。

試合前日に計量が設けられていることから、多くのMMAファイターは計量直前に一時的に体水分を減らし、計量をクリア後、試合翌日までに体重を急激に戻しています。
この計量直前の体重減少をRapid Weight Loss(急速減量)、体重増加をRapid Weight Gain(急速増量)と一般的に呼びます。

今回紹介する論文では、フライ級の男女のMMAファイターのRWLとRWGを比較しています。

論文概要

出典

Peacock, C. A., Braun, J., Sanders, G. J., Ricci, A., Stull, C., French, D., … & Antonio, J. (2023). Weight Loss and Competition Weight Comparing Male and Female Mixed Martial Artists Competing in the Ultimate Fighting Championship’s (UFC) Flyweight Division. Physiologia, 3(4), 484-493.

方法
2020年から2022年にかけてアルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ(UFC)に出場したフライ級(116-125lbs、53-57kg)の選手計103人(男性:50名、女性:53名)を分析対象

体重計測はオフィシャル計量の他に計量の72時間前、48時間前、24時間前、24時間後に実施

結果
体重は時間と性別の交互作用あり
事後分析の結果、男性は女性に比べると、計量前に体重をより減らし、24時間後(試合前)に体重をより増やしていた

下記は男女別の各タイミングの体重の平均値(lbs表記をkg表記に変換)
72時間前:男性→61.9kg、女性→61.1kg
48時間前:男性→61.2kg、女性→60.6kg
24時間前:男性→60.3kg、女性→59.7kg
計量:男性→56.9kg、女性→56.9kg
24時間後:男性→64.4kg、女性→62.2kg

解説

この論文では、MMAのトップ競技団体であるUFCのフライ級に参戦したファイターの計量前後の体重変化を、体重別に検証しています。
得られた結果は明確で、MMAファイターは計量直前に体重を減らし、試合前にかけて急激に増加させていることを示しています。

さらに、男性ファイターは女性ファイターよりも体重変化が顕著であることも分かりました。
この点については、本文での詳細な考察が欠けていますが、男女の身体組成の違いが反映された可能性があります。
つまり、男性のほうが体脂肪率が低く、除脂肪率が高いため、体水分量が多く蓄えられる傾向があります。
そのため、計量前後の著しい水分変動が可能となる上、筋肉量が多いために計量後のグリコーゲン蓄積も多いと考えられます(グリコーゲンは水分とともに蓄積される)。

まとめ

同階級のMMAファイターで比べると、男性は女性よりも計量前後の体重変動が著しい