近所に歩道が多い環境に住む人は座りがちな生活時間が少ない傾向にある

2021年11月2日

はじめに

座りがちな時間(Sedentary time)の多さは、不活動の結果であり、生活習慣病の発症とも関係しています。
また、Sedentary timeの増加はメンタルヘルス(精神衛生)にも悪影響を及ぼします。
当サイトでもこれまでにSedentary timeと健康に関する論文を紹介してきました。

自宅の近隣環境は健康関連行動と関係する可能性があります。
特に、高齢者の多くは若年層よりも自宅で過ごす時間が長いため、近隣環境による影響を受けやすいと考えられます。

今回は、近隣環境と高齢者の座りがちな行動との関係を調べた研究を紹介します。

論文概要

出典

Chang, S. H., Rutherford, R., Hsueh, M. C., Yu, Y. C., Park, J. H., Wang, S., & Liao, Y. (2020). Neighborhood environment and objectively measured sedentary behavior among older adults: A cross-sectional study. Frontiers in Public Health, 8, 803.

方法
調査対象期間:2018年4-9月

対象者:
台湾・台北市に住む65歳以上の高齢者
調査開始時点では199名を対象としたが、データの欠損等の理由によって最終的な分析対象者は126名

行動(活動)の評価:
3軸加速度計を用いて7日間測定
週末1日を含む最低3日間のデータがある場合を有効データ

近隣環境:居住者密度、交差点密度、歩道の利用可能性、アクセス可能な目的地、アクセス可能な公共交通機関を定量

結果
潜在的な交絡因子を調整した上で統計分析を実施した結果、歩道の利用可能性は、座りがちな行動の数、座りがちな行動の持続時間と負の相関

解説

この論文は、高齢者を対象とした場合、自宅近くに歩道が多い人ほど座りがちな行動の回数や持続時間が少ない傾向があったことを示しています。

この論文では近隣環境に関する他の指標(コンビニエンスストア、スーパーマーケット、カフェなどを含む30種類の利用可能な目的地、利用可能な公共交通機関の数など)も調査していましたが、その影響は統計学的に有意ではありませんでした。

健康的なライフスタイルの確立には意志力も大事ですが、周囲の環境も重要に違いありません。
特に数年、数十年単位で影響を与える近隣環境は、自分の健康と深く関わる可能性があるといえます。
引っ越しをする際には、近隣環境にも気を配ってみてはいかがでしょうか?

まとめ

自宅近くに歩道が多い高齢者は、座りがちな行動が少ないようである