【温故知新シリーズ7】平日仕事終わりの短時間高強度走vs週末休みの長時間低強度走

2023年8月16日

はじめに

10年以上前に発表された論文を扱う温故知新シリーズ。
7回目となる今回は、特にフルタイムで働く初心者ランナーに参考になる論文を扱います。

フルタイムで働く人の多くは、平日はトレーニングに費やせる時間に限界があり、長時間のトレーニングを行うことが現実的に難しいことがあります。
一方、週末(休日)は時間にゆとりがあるため、長時間のトレーニングを実施しやすいことが多いです。

今回紹介する論文は、一般ランナーを対象として、週当たりのトレーニング時間が均等の二つのトレーニング計画(平日の仕事終わりに短時間のトレーニングを行うプログラム、週末に長時間のトレーニングを行うプログラム)の効果を比較検証しています。

論文概要

出典

Hottenrott, K., Ludyga, S., & Schulze, S. (2012). Effects of high intensity training and continuous endurance training on aerobic capacity and body composition in recreationally active runners. Journal of sports science & medicine, 11(3), 483–488.

方法
ハーフマラソン出場を目的とした12週間の有酸素トレーニングプログラムの募集に応募した一般ランナー34名を対象(週当たりの持久系トレーニングの時間が1―2時間)
対象者はランダムに平日仕事終わり群と週末休み群に割り当て

トレーニング期間前後の測定項目は下記のとおり
・トレッドミルテスト
→最高酸素摂取量、最高走行速度、乳酸性閾値の走行速度など

・形態・身体組成
→体重、体脂肪率、除脂肪量、内臓脂肪

・その他
→安静時心拍数

トレーニングプログラムは下表のとおり

平日仕事終わり群(2時間30分) 週末休み群(2時間30分)
月曜日 30分@85%乳酸性閾値の走行速度
火曜日 30秒オールアウトスプリント
(つなぎは85%乳酸性閾値の走行速度)
水曜日 30分@100%乳酸性閾値の走行速度
木曜日 4-6本×2分@最高走行速度
(つなぎは90秒@85%乳酸性閾値の走行速度)
金曜日 30秒スプリント
(つなぎは90秒@85%乳酸性閾値の走行速度)
土曜日 30-60分@85%乳酸性閾値の走行速度
日曜日 60-120分@75%乳酸性閾値の走行速度

※5-10分のウォームアップとクールダウンあり

結果
・トレーニング期間中の怪我などによって最終的なデータ分析対象者は平日仕事終わり群が14名、週末休み群が16名

・トレーニングのアドヒアランスは群間差なし

・体重は両群ともに減少
・平日仕事終わり群は除脂肪量の減少がなく、内臓脂肪が16.5%減少
・週末休み群は除脂肪量と体脂肪量ともに減少、内臓脂肪が6.5%減少

・安静時心拍数は両群ともに減少

・最高酸素摂取量は両群ともに増加したが、平日仕事終わり群で顕著
・乳酸性閾値の走行速度は両群ともに増加

・ハーフマラソンに出場した全ランナーがレースを完走、完走時間に群間差なし
(平日仕事終わり群:2時間14分37秒、週末休み群:2時間17分15秒、平均値)

解説

この論文は、一般ランナーを対象として、週当たりのトレーニング時間は一緒なものの、内容が異なる2つのトレーニングプログラムの効果を比較検証しています。

平日仕事終わり群は、除脂肪量の減少なしに内臓脂肪が大幅に削減していました。
したがって、身体組成の改善をターゲットとした場合、週末にまとめて走るよりも、平日の仕事終わりに毎日走った方が効果的だと言えます。
ただし、二つのプログラムは強度が異なっていました。
したがって、トレーニング頻度の差というよりも、運動強度が影響した可能性があります。
実際、運動習慣のない肥満者を対象とした論文でも、同程度の歩数でも早歩きを取り入れることで、内臓脂肪が顕著に減少したことが示されています。

全身持久力を表す最高酸素摂取量も平日仕事終わり群で顕著な増加が認められました。
一般に、全身持久力の向上は量より強度に依存すると言われていることから、この結果もトレーニング頻度というより、強度の差が影響していた可能性が考えられます。
ただし、近年では強度より量に反応しやすいエビデンスも出ています。

ハーフマラソンのタイムは同程度でした。
したがって、ハーフマラソンのタイムをターゲットとした場合、シリアスに取り組まないレベルの一般ランナーは、自身の仕事やプライベートなどの都合をもとに、取り組みやすいアプローチを選んで良いと言えます。

まとめ

多くの一般ランナーは、自身の環境や条件に応じてトレーニングをすれば良い