フルマラソンのレース中あるいはレース後の糖質・タンパク質補給は回復を促進する

2021年3月28日

はじめに

近年、糖質(炭水化物)の単独摂取に比べ、糖質とタンパク質の同時摂取は、持久性運動後の回復に好影響を与えることが実証されています。

今回は、フルマラソンのレース中あるいはレース後に糖質とタンパク質を補給することで、主観的な指標(エネルギー・疲労度・筋肉痛)とクレアチンキナーゼ(筋損傷の指標)の回復が促進されるのかを検証した論文を紹介します。

論文概要

出典
Saunders, M. J., Luden, N. D., DeWitt, C. R., Gross, M. C., & Dillon Rios, A. (2018). Protein Supplementation During or Following a Marathon Run Influences Post-Exercise Recovery. Nutrients, 10(3), 333. https://doi.org/10.3390/nu10030333

方法
同一大会のフルマラソン(42.195km)を対象として2年間にわたり実験

■1年目の実験概要(レース中の栄養摂取に介入)
初心者ランナー17名を対象(1名が途中離脱したため16名が分析対象)
フルマラソン前の長距離走後のクレアチンキナーゼ(CK)の応答をもとに下記の2群に分類
・糖質摂取群(CHO、8名)
・糖質+タンパク質摂取群(CP、8名)

※CKは筋損傷を評価する血液マーカー

ランナーはレース中の各エイドステーションで飲料水とエネルギージェル(CHO群:25gの糖質、0gのタンパク質、0gの脂質、CP群、20gの糖質、5gのタンパク質、0gの脂質)の提供を受けた
レース直後の補給ならびに4時間後の食事は統制したが、その後は制限しなかった

フルマラソンの48時間前、24時間後、72時間後に主観的指標(身体的エネルギー、身体的疲労、精神的エネルギー、精神的疲労)、筋肉痛、CKを評価

■2年目の実験概要(レース後の栄養摂取に介入)
1年目との違いは栄養摂取介入のタイミング
それ以外の実験内容は1年目と同様

初心者ランナー13名を対象(最終的なデータ分析対象者は8名)
フルマラソン前の長距離走後のCKの応答をもとに下記の2群に分類
・糖質摂取群(CHO、4名)
・糖質+タンパク質摂取群(CP、4名)

両群ともにレース中は飲料水、糖質・電解質含有飲料、糖質・電解質含有ジェルを摂取

レース後の栄養摂取は下記のとおり
CHOは糖質が豊富でタンパク質が少ない飲食物が入ったバッグを、CPは糖質とタンパク質が含まれた飲食物(各飲食物は最低でも5gのタンパク質が含まれていた)が入ったバッグを受け取った
対象者は受け取ったバッグの中から自分の好みに応じて好きなだけ摂取することができたが、2時間後まではそれ以外の飲食物の摂取は許可されなかった
1年目の実験結果からCPのレース後のタンパク質摂取量は20g以上になると予想された
4時間後の食事は統制したが、以降は制限しなかった

結果
※数値は平均値
■1年目
・マラソンのタイム
CHO:244.6分、CP:236.8分(有意差なし)

・レース中の栄養摂取
CHO:糖質123g、タンパク質0g、脂質:0g
CP:糖質118g、タンパク質29g、脂質0g

・72時間後の身体的エネルギー、精神的疲労、筋肉痛の回復度はCHOに比べてCPで優れていた

■2年目
・マラソンのタイム
CHO:230.5分、CP:253.0分(CHOの方が速かった)

・レース直後の栄養摂取
CHO:585kcal、糖質111g、タンパク質5g、脂質:13g
CP:489kcal、糖質57g、タンパク質28g、脂質17g

・72時間後の身体的疲労、精神的エネルギー、筋肉痛の回復度はCHOに比べてCPで優れていた

解説

実験室での模擬レースではなく、実際のフルマラソン大会を対象として、それも2年間にわたり実験をした貴重なデータです。
この論文は、レース中、レース後のいずれにおいても、糖質とタンパク質を同時に摂取することで、糖質のみを摂取した場合に比べて72時間後の主観的指標(エネルギー、疲労感、筋肉痛)の回復に好影響を与えたことを示しています。

興味深い結果としては、24時間後ではCHOとCPとの間で差が認められないというものです。
この原因について論文内で詳細な考察はされていませんでしたが、チームスポーツを対象とした先行研究においても24時間後で差がなくても72時間後に差が認められた結果(CHOに比べてCPで回復が促進)があるようです。
したがって、糖質とタンパク質の同時補給は24時間後より後の回復に効果的なのかもしれません。

特に2年目の実験には研究上の大きな限界が複数あり(マラソンのパフォーマンスが異なる、対象者数が少ない、摂取カロリーに差がある、など)、エビデンスレベルの高い論文とは言えません。

一方、実験室でより統制された条件で実施された研究によっても糖質とタンパク質を積極的に補給することが一過性の持久性運動後の回復の促進に有効なことを示す論文が複数あります。
レース後のダメージを軽減したい方は糖質のみならずタンパク質を同時に補給することを心がけると良いかもしれません。

まとめ

フルマラソンのレース中あるいはレース後に糖質に加えてタンパク質を摂取すると、3日後の主観的な回復度に好影響を与える