コンカレントトレーニングは健康に関連した生活の質を高めるのに有効な手段

はじめに

当サイトでは、これまでにコンカレントトレーニング(複合トレーニング)の有効性について触れてきました。
具体的な記事は下記の二つです。
・筋トレvs有酸素vs筋トレ+有酸素 高齢者の健康度を高めるアプローチは?(リンク
・高齢男性のコンカレントトレーニングでの筋トレは、疲労困憊まで行う必要はない(リンク

今回は、有酸素性トレーニング、レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)、コンカレントトレーニング(有酸素性トレーニング+レジスタンストレーニング)が健康関連の生活の質に及ぼす影響を検証した論文を紹介します。

なお、健康関連の生活の質(Health related Quality of Life: HrQoL)は次のような概念だとされています。

身体的、感情的、精神的なウェルビーイング(幸福)を含んだ多次元の概念。低いHrQOLは、日常生活動作を実行する能力の低下、痛みによる身体的制限、エネルギー、の喪失、社会活動能力の制限、うつ病や神経質傾向の増加に関係する。

(引用:Posthouwer, D., Plug, I., van der Bom, J. G., Fischer, K., Rosendaal, F. R., & Mauser-Bunschoten, E. P. (2005). Hepatitis C and health-related quality of life among patients with hemophilia. Haematologica, 90(6), 846–850.)

論文概要

出典
Collins KA, Fos LB, Ross LM, Slentz CA, Davis PG, Willis LH, Piner LW, Bateman LA, Houmard JA and Kraus WE (2021) Aerobic, Resistance, and Combination Training on Health-Related Quality of Life: The STRRIDE-AT/RT Randomized Trial. Front. Sports Act. Living 2:620300. doi: 10.3389/fspor.2020.620300

方法
一定の選択基準(年齢:18-70歳、座りがちな生活習慣、BMI:26-35、軽度―中程度の脂質異常症、糖尿病・高血圧・冠状動脈疾患の病歴がない、非喫煙者)を満たした234名を対象
ランダム化前の慣らし期間やランダム化比較実験中の離脱によって、最終的な分析対象者は144名(ただし調査・測定項目により多少の減少あり)

対象者は下記の3群に割り当て
・有酸素性トレーニング(AT):週当たりのエネルギー消費量が体重1kg当たり14kcalになるように設定された有酸素性トレーニング。運動強度は65-80%最高酸素摂取量。週当たりのトレーニング頻度は規定せず毎回のトレーニング時間が60分を超えないこと、週3回以上トレーニングを実施することが推奨された

・レジスタンストレーニング(RT):週3回、8種目(ベンチプレス、ミリタリープレス、ラットプルダウン、シーティングロー、バックエクステンション(あるいはバイセップスカール・トライセップスエクステンション)、エクステンション、レッグカール、レッグプレス)、8-12回

・有酸素性トレーニング+レジスタンストレーニング(AT+RT):ATとRTの組み合わせ

トレーニング期間は8ヶ月

トレーニング期間の前後に下記項目を測定
・Short form-36(SF-36):36項目の質問によって構成。8つの下位領域(身体機能、役割機能(身体)、身体の痛み、全体的健康観、活力、社会生活機能、役割機能(精神)、心の健康)に分けられる調査。これらは身体的健康度と精神的健康度の2つのサマリーに大別

・身体機能と外見に対する満足度調査:9つの質問によって構成。身体機能(SPF)と身体的外観(SPA)の満足度を調査

・身体組成:体脂肪量、ウエスト周径囲、ヒップ周径囲

・体力:全身持久力(最高酸素摂取量)、筋力(RT、AT+RTのみ)

結果

・データ分析対象者の年齢は平均49歳、BMIは平均30.6、女性の割合は57.7%

・全身持久力は全群で増加
・筋力はRT、AT+RTで増加(ATは未測定)

・ウエスト周径囲はAT、AT+RTで減少
・体脂肪量はAT+RTで減少
・ヒップ周径囲はAT+RTで減少

・SF-36に関して、身体的健康度のスコアはRT、AT+RTで増加、精神的健康度のスコアはAT+RTで増加、各下位領域のスコアの改善の度合いはAT+RTで最も顕著

・SPFとSPAは全ての群で改善、事後検定の結果などを踏まえると、AT+RTの改善が最も顕著

解説

この論文は以前に発表された別論文※の実験を異なる観点から再検証したものです。

※別論文に関する情報
Bateman, L. A., Slentz, C. A., Willis, L. H., Shields, A. T., Piner, L. W., Bales, C. W., Houmard, J. A., & Kraus, W. E. (2011). Comparison of aerobic versus resistance exercise training effects on metabolic syndrome (from the Studies of a Targeted Risk Reduction Intervention Through Defined Exercise – STRRIDE-AT/RT). The American journal of cardiology, 108(6), 838–844. https://doi.org/10.1016/j.amjcard.2011.04.037

この論文は、有酸素性トレーニングと筋力トレーニングのどちらも健康関連の生活の質や身体機能・外見に対する満足度を高めるものの、両者を組み合わせたコンカレントトレーニングが最も効果的であったことを示しています。

この結果自体は不思議なものではなく、有酸素性トレーニングによって体脂肪が減り、レジスタンストレーニングによってより逞しい筋肉を作れれば、主観的な健康度や身体機能・外見に対する満足度は上がることは容易に想像できます

ただしAT+RTは有酸素性トレーニングとレジスタンストレーニングの二つのトレーニングを実施しているため、より時間をかけてトレーニングを実施しています。
時に例外もありますが、活動量が少ない過体重や肥満の人を対象とした場合、運動量が多くなればその分得られる効果は高くなることが多いです。
したがって、ATやRTが倍のトレーニング量を実施した場合、AT+RTと同程度のトレーニング効果になった可能性は否定できません。

また、この研究では8ヶ月の介入期間に少なからずの離脱者が出ていることから、誰もが気軽に実施できるトレーニングとは言えないところがあります。

まとめ

コンカレントトレーニング(有酸素性トレーニング+レジスタンストレーニング)は健康関連の生活の質、身体機能・外見への満足度を高める有効な戦略