新型コロナウイルス感染拡大による在宅勤務は座りがちな時間を増やし身体活動量を減らした

2022年10月28日

はじめに

新型コロナウイルスの感染拡大後、体重が増えた人が一定数いるようです。
その原因としては、食習慣の乱れというよりも、身体活動量の減少が影響している可能性が高いことも示唆されています。


諸外国と同様に、日本でも感染拡大を防ぐための施策として在宅勤務(テレワーク)を取り入れた企業はこの1年間で増えました。

東京都の調査によると、都内企業のテレワーク実施率は2020年3月の時点では24.0%でしたが、2021年1月では57.1%でした。
(引用:東京都公式ホームページ:https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2021/01/22/17.html

在宅勤務は感染リスクを防ぐ効果が期待できる一方、職場や通勤中の身体活動量が減少するため、健康面には悪影響を及ぼす可能性があります。

今回は首都圏に住む労働者を対象として、在宅勤務の実施状況と身体活動レベルとの関係を検証した論文を紹介します。

論文概要

出典

Fukushima, N., Machida, M., Kikuchi, H., Amagasa, S., Hayashi, T., Odagiri, Y., Takamiya, T., & Inoue, S. (2021). Associations of working from home with occupational physical activity and sedentary behavior under the COVID-19 pandemic. Journal of occupational health63(1), e12212. https://doi.org/10.1002/1348-9585.12212

方法

インターネット調査会社が実施したデータを利用
首都圏在住2362人の登録者のうち、会社の従業員(含むパートタイマー)1239人が分析対象(平均年齢:44.7歳、男性のパーセンテージ:59.2%)
対象者は在宅勤務(Work from home; WFH)、在宅勤務なし(no WFH)に分類
WFHは在宅勤務の状況(パーセンテージ)によって1-25%、26-50%、51-75%、76-100%のサブグループに分類

仕事中の身体活動量について下記の項目ごとに定量
座りがちな時間(SB)
低強度身体活動時間(LPA)
中-高強度身体活動時間(MVPA)

結果
・分析対象者のうち494人(39.9%)がWFHに分類(1-25%:112人、26-50%:105人、51-75%:48人、76-100%:229人)

・仕事中のSB:no WFH<WFH(s224.7分vs335.7分)

・仕事中のLPA:no WFH>WFH(122.9分対59.6分)

・仕事中のMVPA:no WFH>WFH(91.9分対55.3分)

・サブグループ間の比較では、在宅勤務のパーセンテージが高い人ほど、SBが長く、LPA・MVPAが短い傾向

解説

この論文は、テレワーク(在宅勤務)は、職場で勤務する場合と比べると仕事中の身体活動レベルが低く、座りがちな時間が長いことを明らかにしました。
また、在宅勤務の実施割合(パーセンテージ)と仕事中の身体活動量との間にはDose-response関係が認められ、在宅勤務のパーセンテージが高い人ほど座りがちな時間が長く、低強度・中-高強度の身体活動時間が少ない傾向にありました。

この論文の結果は、マスメディアの報道や社会情勢を踏まえると予測できるものであり、「やっぱりね」という感想を抱きます。
それでも査読なしの一調査の報告を鵜呑みするよりも、査読(審査)を受けた論文のデータを参考にすることは科学的な姿勢として望ましいものだと考えます。

まとめ

在宅勤務を取り入れると仕事中の身体活動レベルが下がる