砂糖を含むカフェインドリンクを飲む若年女性は睡眠の質が悪いようだ

はじめに

良質な睡眠の確保は、健康的な生活を送る上で最優先すべき事項です。

当サイトではこれまでに睡眠と食生活との関連に着目した論文を紹介してきました。
例えば女子大生を対象とした研究によると、睡眠の質が悪い人ではエネルギー摂取量、総脂肪摂取量、飽和脂肪酸脂肪量が高い傾向にありました。


また、この研究では、一般に健康に悪いと言われている精製穀物や添加糖類の摂取量が多いと睡眠の質が悪い傾向も認められています。

先行研究によって、若年成人では男性に比べて女性の方が睡眠に問題を抱えている率が高いことが示されています。
(引用:Fatima, Y., Doi, S. A., Najman, J. M., & Mamun, A. A. (2016). Exploring Gender Difference in Sleep Quality of Young Adults: Findings from a Large Population Study. Clinical medicine & research, 14(3-4), 138–144. https://doi.org/10.3121/cmr.2016.1338

そこで今回は若年女性を対象として、睡眠の質と食生活との関係を検証した論文を紹介します。

論文概要

出典

Young, D. R., Sidell, M. A., Grandner, M. A., Koebnick, C., & Troxel, W. (2020). Dietary behaviors and poor sleep quality among young adult women: watch that sugary caffeine!. Sleep health, 6(2), 214–219. https://doi.org/10.1016/j.sleh.2019.12.006

方法
思春期女性を対象としたコホート研究の参加者を対象(コホート研究は2006年に開始され、2009年、2015年にフォローアップ調査を実施)
本研究は2015年の調査のデータを利用
2009年の研究参加者のうち81.3%が2015年の調査に回答

調査項目は下記のとおり
・Pittsburgh Sleep Quality Index(PSQI):睡眠の質
→スコアが5未満で睡眠の質が高い(good sleep quality)、5以上で睡眠の質が悪い(poor sleep quality)とした

・人口統計学情報
→人種/民族性、身長、体重、BMI、婚姻状況、教育歴、就職状況(学生・就業者、失業者)、労働時間、自身の収入、家族の社会経済的地位

・食生活
→過去1週間の果物と野菜の摂取量、飲料(ソーダ、スポーツドリンク、その他の甘い飲み物、高カロリーコーヒー飲料)の摂取頻度、朝食の摂取頻度を評価

PSQIのスコアと食生活との関連について、人口統計学情報を制御した上で検証

結果
・データ分析対象者は462名、平均年齢22.9歳、平均BMIが26.0kg/m2、対象者のうち35.1%が学生、就業者が58%

・睡眠の質が悪い(PSQIが5以上)人は45.2%
・睡眠の質が高い人に比べ悪い人では黒人の割合・BMI、失業者の割合が高く、教育歴や家族の社会経済的地位が低かった

・人口統計学情報とBMIを調整後に関連が認めた項目は下記のとおり
→エナジードリンクを飲んでいる人は、飲んでいない人に比べ睡眠の質が悪かった
→高カロリーコーヒー飲料を飲んでいる人は、飲んでいない人に比べて睡眠の質が悪かった
→砂糖で甘くした飲料(Sugar-sweetened beverage)を飲んでいる人は、飲んでいない人に比べ睡眠の質が悪かった

・計算上、高カロリーコーヒー飲料を1日一杯以上飲んでいる人は、飲んでいない人に比べ睡眠潜時が平均8.7分長くなった

解説

この論文は、若年女性を対象として睡眠の質と食生活との関連を調査した結果、カフェインと砂糖が含まれた飲料(エナジードリンク、高カロリーコーヒー飲料)を習慣的に飲んでいる人では、睡眠の質が悪い傾向があることを報告しました。

カフェインは睡眠時間の短縮を招いたり、睡眠の質を悪化させたりすることは認識されています。
(引用:Clark, I., & Landolt, H. P. (2017). Coffee, caffeine, and sleep: A systematic review of epidemiological studies and randomized controlled trials. Sleep medicine reviews, 31, 70–78. https://doi.org/10.1016/j.smrv.2016.01.006)

一方、この論文ではカフェインに加えて砂糖が含有されるエナジードリンクや高カロリーコーヒー飲料と睡眠の質との間に関連が認められました。
近年では、砂糖が睡眠の質を悪化させる可能性も指摘されています。
したがって、この論文の結果は、カフェインと砂糖の二つの作用が重なったかもしれません。
なお、砂糖が睡眠に負の影響を与えるメカニズムとしては、インスリンの過剰分泌やその後の血糖値の動乱に伴うストレスホルモンの亢進などが可能性として挙げられます。

この論文の研究デザインでは因果関係に関する詳細な言及はできません。
しかし、いくつかの論文を踏まえると、単純糖質(砂糖、ブドウ糖、果糖)や飽和脂肪酸、カフェインの過剰摂取は良質な睡眠を妨げる可能性が高そうです。

まとめ

エナジードリンクや砂糖入りコーヒー飲料の摂取は良質な睡眠を妨げる可能性