若年成人が心血管疾患を予防するためには全身持久力と睡眠が重要

2021年8月17日

はじめに

心血管疾患(Cardiovascular Disease: CVD)とは、動脈硬化によって引き起こされる疾患のことをいい、冠動脈疾患、脳梗塞、末梢動脈疾患を含みます。
食事、運動、睡眠、ストレスといった生活習慣がCVDの発症や進行に深く関係しています
また癌と同様に、自覚症状が無いままま進行し、症状が現れたときには既に重症化しているケースが多いのが特徴です。

したがって、見かけ上は健康にみえる若年成人でも将来CVDにならないために若いときから生活習慣を整えるのは重要です。

今回はスウェーデンで行われた若年成人の生活習慣とCVDリスクとの関係を検証した論文を紹介します。

論文概要

出典

Fernström, M., Fernberg, U., & Hurtig-Wennlöf, A. (2020). The importance of cardiorespiratory fitness and sleep duration in early CVD prevention: BMI, resting heart rate and questions about sleep patterns are suggested in risk assessment of young adults, 18-25 years : The cross-sectional lifestyle, biomarkers and atherosclerosis (LBA) study. BMC public health, 20(1), 1715. https://doi.org/10.1186/s12889-020-09801-3

方法
スウェーデンのオレブロ大学で実施されたLifestyle, Biomarkers and Atherosclerosis studyの参加者843名(男女、18-25歳、非喫煙者)のデータを分析

評価・分析項目は下記のとおり
身体組成(体脂肪率、BMI)
血液マーカー(HDLコレステロール、LDLコレステロール、インスリン、血糖値、インスリン抵抗性(HOMA-IR))
平均動脈圧
安静時心拍数
CVDリスク(血圧、トリグリセリドなどの数値をもとにWildman Risk scoreによって評価)
中―高強度身体活動量
全身持久力(推定最大酸素摂取量によって評価)
握力
睡眠習慣(睡眠時間、睡眠の質)
食習慣

結果
・睡眠時間の短い人はBMI、体脂肪率が高い傾向
・睡眠時間の短い人はインスリン抵抗性、CVDリスクを抱えている傾向

・生活習慣指標のうちCVDリスクに最も関係していたのは全身持久力。次いで睡眠時間、中―高強度身体活動時間、食習慣の順であった(全身持久力と睡眠時間のみ同一モデル内でのオッズ比が有意)

・全身持久力は安静時心拍数と相関関係があった
・インスリン抵抗性はBMIと相関関係があった

解説

この論文は、スウェーデンの若年成人を対象としてCVDリスクと生活習慣との関係を検証した結果、全身持久力と睡眠時間が特にCVDリスクと関係していたことを明らかにしました。
つまり、フィットネス(体力)が高く、よく寝ている人達は血圧や血液マーカーといったCVDリスクの数値が正常の傾向にありました。

また論文の著者らは全身持久力と安静時心拍数、インスリン抵抗性とBMIとの間にそれぞれ相関関係が認められた結果をもとに、睡眠に関する調査とBMIと安静時心拍数の測定の組み合わせが、若年成人のライフスタイルを評価する上で簡便かつ信頼のおける指標だと言及しています。

当サイトでもこれまでに睡眠と健康に関する論文を紹介してきましたが、この論文でも睡眠が与える影響は顕著でした。

睡眠時間の短縮がCVDを引き起こすメカニズムとしては、いくつが考えられますが、一つは食欲を調整するホルモンの働きが乱れ、過食に陥ってしまうことです。
また睡眠時間の短縮は、日中の身体活動量の低下に繋がることも報告されています。
いずれにせよ、睡眠時間の短縮は肥満を誘発し、肥満はCVDを引き起こします。
したがって、若いうちから量・質ともに望ましい睡眠がとれるように運動や生活リズムを整えることは大事に違いありません。

まとめ

若年成人の心血管疾患リスクは全身持久力と睡眠時間が強く関係