ワールドクラスの100kmウルトラランナーのレース中のステップ頻度(ピッチ)

はじめに

当サイトでは、以前からウルトラマラソンに関する様々な論文を紹介してきました。

今回はウルトラマラソンの中でも一番のメジャー種目とも言える100kmウルトラマラソンに着目した論文を取り上げます。

紹介する論文では、100kmウルトラマラソン世界選手権の男女各25位以内に入ったウルトラマラソンランナーのレース中のステップ頻度の特徴を検証しています。

論文概要

出典

Burns, G. T., Zendler, J. M., & Zernicke, R. F. (2019). Step frequency patterns of elite ultramarathon runners during a 100-km road race. Journal of applied physiology (Bethesda, Md. : 1985), 126(2), 462–468. https://doi.org/10.1152/japplphysiol.00374.2018

方法
2016年に開催された国際ウルトラランナーズ協会(IAU)世界選手権に出場したランナーのうち、男女各上位25位以内のデータを募集
分析対象者は男性12名、女性8名の合計20名

各ランナーのスポーツウォッチ(例:Garmin Forerunner 235など)から得られるデータを分析

結果
対象者の完走時間は男性が6時間37分23秒-6時間56分56秒、女性が7時間34分25秒-8時間23分39秒

レース中の平均ステップ頻度は182spm(男性:177.6spm、女性188.5spm)

走行速度はステップ頻度に影響する(走行速度が高いとステップ頻度が多い)
身長はステップ頻度に影響する(背の高いランナーのステップ頻度は少ない)
年齢、体重、ランニング経験はステップ頻度に有意な影響なし

レース中のステップ頻度の変動係数(標準偏差/平均)は平均4.2%
走行速度はステップ頻度の変動係数に影響する(走行速度が高いとステップ頻度の変動係数は小さい)
走行距離はステップ頻度の変動係数に影響する(レース距離が進むにつれて変動係数は低下する)

解説

この論文は、ワールドクラスのウルトラマラソンランナーを対象として、100km世界選手権レース中のステップ頻度(ピッチ)を報告しています。
対象者がワールドクラスであることに加え、世界選手権のデータを検証している点に価値があります。

得られた結果は、1) ステップ頻度は走行速度が高いほど多いこと、2) ステップ頻度のばらつきは走行速度が高いと少ないこと、を示しています。

数あるフォーム指標の中でも、ステップ頻度はスポーツ系GPSウォッチ搭載の加速度計で気軽に測ることが出来るため、一般ランナーでも自分のピッチ数は気軽に把握できます。

ただし、レース中にステップ頻度を上げようとしたり、ばらつきを小さくしようとしたりしても、優れたパフォーマンスに繋がるわけではない点に注意が必要です。

まとめ

ピッチは多く、そのばらつきが小さいと100kmウルトラマラソンの高いスピードに繋がる