様々な種類のバーベルスクワット中の下肢筋活動の違い

2021年4月4日

はじめに

筋電図で計測される筋活動は、筋線維から発生する活動電位を可視化することができます。
筋活動は、その筋が、いつ、どのように、どれぐらいの強度で活動しているのかの手がかりを提供しています。
したがって、特定の筋肉の最大筋力や筋肥大の向上を狙う場合、トレーニング種目の筋活動を理解しておくことは重要です。
(例えば大腿四頭筋の筋肥大を起こしたい場合、大腿四頭筋の筋活動が十分に起こる種目を選択した方が望ましい)

今回はバーベルを用いて行った5種類のスクワット中の筋活動を評価した論文を紹介します。

論文概要

出典
Coratella, G., Tornatore, G., Caccavale, F., Longo, S., Esposito, F., & Cè, E. (2021). The Activation of Gluteal, Thigh, and Lower Back Muscles in Different Squat Variations Performed by Competitive Bodybuilders: Implications for Resistance Training. International journal of environmental research and public health, 18(2), 772. https://doi.org/10.3390/ijerph18020772

方法
5年以上の競技経験を有する10名の男性ボディービルダーを対象

実施種目は下記の5種目
フルバックスクワット(full-BS):通常の足幅、大腿が床と平行以上の深さまで下げる
パラレルバックスクワット(parallel-BS):通常の足幅、大腿が床と平行の深さまで下げる
スモースタンスバックスクワット(sumo-BS):通常の2倍の足幅、大腿が床と平行の深さまで下げる
下肢を外旋させた上体でのスモースタンスバックスクワット(external-rotated-sumo-BS):通常の足幅の2倍で下肢を外旋させた状態、大腿が床と平行の深さまで下げる
フロントスクワット(FS):通常の足幅、バーベルを鎖骨線と胸骨で保持、大腿が床と平行の深さまで下げる

各種目はそれぞれの1RMの80%の重量で疲労困憊に至らない範囲(6回)で実施

筋活動は表面筋電計を用いて、大殿筋、中殿筋、大腿直筋、外側広筋、内側広筋、長内転筋、脊柱起立筋最長筋、脊柱起立筋腸肋筋を対象
筋活動は最大随意等尺性収縮時の筋活動で正規化
各スクワット中の筋活動は下降局面と上昇局面ごとに評価

結果
下降局面
→大殿筋と中殿筋の筋活動の振幅(RMS amplitude)は、FSが他の4つのエクササイズで有意に高かった
→脊柱起立筋腸肋筋のRMS amplitudeは、FSが他の4つのエクササイズに比べて有意に高かった

上昇局面
→外側広筋のRMS amplitudeは、sumo-BSとexternal-rotated-sumo-BSがFSに比べて有意に高かった
→長内転筋のRMS amplitudeはsumo-BSがFSに比べて、external-rotated-sumo-BSがFull-BS・pararel-BS・sumo-BSに比べて有意に高かった

解説

この論文の主な結果は次のとおりです。
下降局面の殿筋群の筋活動はフロントスクワットでより活発になる
上昇局面の外側広筋と長内転筋の筋活動は、足幅が広いときに活発になる

このうち前者、すなわち殿筋群の筋活動が高まった理由について論文の著者らは、下降局面で体幹の角度を維持しながら正確に実施する上で、バーベルが前に滑ることを防ぐため(大殿筋)、膝が内側にずれることを防ぐため(中殿筋)により活性化した可能性を指摘しています。

外側広筋の筋活動がsumo-BSあるいはexternal-rotated-sumo-BSで高かった理由については、過去の先行研究とも一致しており、下肢の外旋の有無に関わらず、スタンスが広い場合に筋活動が増すようです。
一方、内側広筋は種目間での差は認められず、その数値をみても高い筋活動を記録していました。内側広筋は、膝蓋骨の安定化に関与しており、今回のように高重量を持ちあげる際には、どの種目であっても、活性度が高まる可能性があります。

長内転筋の筋活動も足幅が広い場合の上昇局面で活性度が高く、特にexternal-rotated-sumo-BSではsumo-BSを除く3種目と比べて有意に高いという結果でした。
これは、大腿部や体幹の適切な姿勢を維持するためと、external-rotated-sumo-BSでは長内転筋がより伸ばされた状態となり、十分に筋発揮がしやすい条件であったことが考察されています。

「King of exercise」とも呼ばれ、レジスタンストレーニングの王道種目であるスクワット。
一口にスクワットといっても、トレーニング効果を左右する変数には様々なものがあり、今回紹介した論文は、フォームの違いに着目しています。
通常のスクワットで得られる刺激がマンネリ化してきたと感じた方は、足幅を広げたり、フロントスクワットを取り入れてみるのかも良いのかもしれません。

まとめ

フロントスクワットは下降局面での殿筋群の筋活動が高まり、広い足幅では上昇局面での外側広筋や長内転筋の筋活動が高まる