筋トレ前のSNSはボリュームを減らす

2022年9月19日

はじめに

以前、競技前・練習前にスマートフォンでSNSを利用すると、メンタル疲労を誘発し、パフォーマンスやトレーニング効果にネガティブな影響が出る可能性を述べました。


その際に引用した論文は、数十秒から数分持続される高強度持久系スポーツである競泳選手を対象としていました。

今回はレジスタンストレーニング(筋トレ)の前にSNSを利用する影響を検証した論文を紹介します。

なお、以前に紹介した二つの論文と今回紹介する論文は同じグループが研究しています。

論文概要

出典

Gantois, P., Lima-Júnior, D., Fortes, L. S., Batista, G. R., Nakamura, F. Y., & Fonseca, F. S. (2021). Mental Fatigue From Smartphone Use Reduces Volume-Load in Resistance Training: A Randomized, Single-Blinded Cross-Over Study. Perceptual and motor skills, 315125211016233. Advance online publication. https://doi.org/10.1177/00315125211016233

方法
習慣的に筋トレを実施している若年成人(18-36歳)20名を対象
途中離脱によって最終的な分析対象者は16名(男性8名、女性8名)

シングルブラインドランダムクロスオーバーデザイン
慣れ・テストの再現性把握を目的としたプレ試験後、2条件のトライアルをランダムに実施

各トライアルは下記の順序で実施
1)回復度(Total Quality Recovery: TOR)、メンタル疲労度、心拍変動(Heart rate variability: HRV)の測定
2)バックスクワットの実施
3)実験負荷
4)メンタル疲労度、モチベーションの測定
6)バックスクワットの実施

実験負荷は下記の2種類
メンタル疲労条件:スマートフォンでSNSアプリ(例:Facebook, Instagram, Twitter)を30分利用
コントロール条件:ノートパソコンでドキュメンタリー(Secrets of NASA:1°Season-Eps 05)を30分鑑賞

実験負荷前後のバックスクワットの詳細は下記のとおり
セット数:3セット
重量:80%15RM
反復回数:各セット疲労困憊まで
休息時間:3分(セット間)
しゃがむ深さ:パラレル
測定項目:反復回数、主観的運動強度(RPE)、動作速度、パワー

結果
・バックスクワット
→後半3セット(実験負荷後)の反復回数はメンタル疲労負荷で顕著に低下(セット×条件の交互作用あり)
→前半3セットに対する後半3セットの量負荷(kg)の低下はメンタル疲労負荷で顕著(メンタル疲労負荷:-29%、コントロール負荷:-14.8%)
→ピークパワー、ピーク速度は両群ともに後半で低下(セット×条件の交互作用なし)
→RPEは両群ともに後半3セットで増加(セット×条件の交互作用なし)

・その他の指標
→実験負荷前の各数値(HRV、TOR、メンタル疲労度)に群間で有意差なし
→実験負荷後のメンタル疲労度はメンタル疲労負荷条件で増加(時間×条件の交互作用あり)

解説

実験負荷前にも筋トレをしている点など、実験デザインが複雑な論文です。
この論文は、筋トレ前に30分間スマーフォンでSNSを利用することで、メンタル疲労が起こり、レジスタンストレーニングのボリュームが低下したことを示しています。

競泳選手を対象とした論文同様、この論文も測定項目に限界があり、メンタル疲労の詳細やボリュームが低下したメカニズムは不明です。
しかし、高強度持久系種目と同じく、筋トレにおいてもメンタル疲労によって主観的運動強度(きつさ)が増して、脳が早期に限界を感じるようになったと考えられます。

またこの論文からは筋トレ前のSNS利用が長期的なトレーニング効果に及ぼす影響はわかりませんが、量負荷(ボリューム)が筋肥大や最大筋力の効果を左右する変数であることを踏まえると、トレーニーは筋トレ前に過度なSNS利用を控えた方が良いかもしれません

まとめ

筋トレ前にSNSを利用すると、ボリュームが下がる