ダンベルランジの種類と体幹角度が筋活動に及ぼす影響

はじめに

筋活動は、その筋がどれぐらいの強度で活動しているのかの手がかりを提供しています。
したがって、ある筋肉の筋力や筋肥大の向上を図りたい場合、トレーニング種目の筋活動を把握するのは役に立ちます。

今回は日常生活やスポーツ活動の動作形態に近く、アスリートならびに一般の健康愛好家の間で広く普及しているランジを取り上げます

重量(ウエイト)を扱うランジは、大腿四頭筋、ハムストリングス、大殿筋といった下肢の大筋群が鍛えられる上、片側性という特性上、正確なフォームで実施するためにはバランスを保つために体幹筋群も適切に活性していると考えられます。

今回は女性トレーニーを対象として、3種目(スプリット、フロント、ウォーキング)・2姿勢(体幹直立、体幹前傾)のダンベルランジを実施した際の脊柱起立筋、大殿筋、ハムストリングス(大腿二頭筋)、大腿直筋の筋活動を比較した論文を紹介します。

論文概要

出典

Bezerra, E. S., Diefenthaeler, F., Nunes, J. P., Sakugawa, R. L., Heberle, I., Moura, B. M., Moro, A., Marcolin, G., & Paoli, A. (2021). Influence of Trunk Position during Three Lunge Exercises on Muscular Activation in Trained Women. International journal of exercise science, 14(1), 202–210.

※数値は平均値
方法
一定の選択基準(女性、20歳-30歳、過去1年以内の腰背部や下肢の傷害歴なし、1年以上のレジスタンストレーニングの経験を有する)を満たした12名の女性トレーニーが実験を完遂
対象者の特徴は下記のとおり
年齢:24歳
体重:56.9kg
身長:1.62m
体脂肪率:17.0%
トレーニング歴:2.5年

対象者は6条件(3種目×2姿勢)のランジを実施
種目は下記のとおり
・スタティックランジ(STAT):動作中の両足は固定、いわゆるスプリットスクワット、右脚を前に出して実施、右膝の屈曲角度90-100度、

・ステップフォワードランジ(FORW):直立姿勢から右脚を前に出して実施、右膝の屈曲角度90-100度、その後、両足で同時に地面を押して直立姿勢に戻る

・ウォーキングランジ(WALK):直立姿勢から右脚を前に出して実施、右膝の屈曲角度90-100度、その後、左足で地面を押して前に進み直立姿勢をとる

姿勢は体幹直立と体幹前傾の2つ

両脚のステップ長を個人ごとに決定(79.4cm)
合計で体重の30kgのダンベルを両手に保持した状態で実施

各試行はランダムに6回実施(試行間の休息時間は5分)
収縮時間は伸張性収縮2秒、最屈曲時での等尺性収縮1秒、短縮性収縮2秒

前脚(右脚)の大殿筋、大腿二頭筋、大腿直筋、右側の脊柱起立筋下部の筋活動レベルを表面筋電図によって評価
いずれも最大随意時等尺性収縮時の筋活動レベルをもとに正規化(%MVIC)

結果
脊柱起立筋下部の筋活動:
姿勢による主効果あり(直立:20%、前傾:40%)
種目による主効果あり(STAT:24%、FORW:26%、WALK:40%)
交互作用なし

大殿筋の筋活動:
姿勢による主効果なし(直立:45%MVIC、前傾:50%MVIC)
種目による主効果あり(STAT:31%MVIC、FORW:54%MVIC、WALK:58%MVIC)
交互作用なし

大腿二頭筋の筋活動:
姿勢による主効果なし(直立:23%MVIC、前傾:24%MVIC)
種目による主効果なし(STAT:21%MVIC、FORW:26%MVIC、WALK:24%MVIC)
交互作用なし

大腿直筋の筋活動:
姿勢による主効果なし(直立:68%MVIC、前傾:72%MVIC)
種目による主効果なし(STAT:64%MVIC、FORW:69%MVIC、WALK:75%MVIC)
交互作用なし

解説

この論文は、女性トレーニーを対象として、ダンベルランジの種類と姿勢が筋活動に及ぼす影響を検証しました。
得られた主な結果は下記のとおりです。
脊柱起立筋は姿勢(前傾姿勢で高まる)、種目(ウォーキングランジで高まる)によって、筋活動が異なる
大殿筋は種目(フォワードランジ、ウォーキングランジで高まる)によって筋活動が異なる
大腿二頭筋、大腿直筋は姿勢、種目によって筋活動が変わらない

体幹伸展の主働筋である脊柱起立筋は、前傾姿勢でのウォーキングランジで最も筋活動レベルが観察されました(約50%MVIC)。
これは、体幹前傾を伴いながら前方移動を強いられるために、体幹が屈曲せず適切な姿勢を保つために脊柱起立筋がより活動した結果だと考えられます。

なお、%MVICの数値自体は大腿直筋で最も高く(60-70%MIVC台)、股関節伸展作用のある大殿筋(30-50%台)や大腿二頭筋(20%台)は、筋力向上に効果的な筋活動レベルとは言えませんでした。
この原因は、重量(ダンベル)設定や各試技を疲労困憊まで行っていないことが考えられます。

まとめ

ダンベルランジの体幹・下肢の筋活動レベルは種目や姿勢によって変化する