スプリントインターバルトレーニングをしても1日後には身体は回復している模様

はじめに

スプリントインターバルトレーニング(SIT)は、途中からパワーやスピードが低下しても良いので、とにかく最初から全力で行うことが特徴のトレーニングです。
SITは、幅広い層を対象として、有酸素性・無酸素性の運動能力を高める効果が期待できます。

SITのプロトコルとしては、30秒のオールアウト運動を数分(例:4分)の休息を挟みながら4-6本繰り返す形式が有名ですが、各本の運動時間が30秒未満のものもあります。
例えば2010年の論文によると、各本の運動時間が10秒、30秒のSITともに有酸素性・無酸素性のパフォーマンスが改善したことが報告されています。
Hazell, T. J., Macpherson, R. E., Gravelle, B. M., & Lemon, P. W. (2010). 10 or 30-s sprint interval training bouts enhance both aerobic and anaerobic performance. European journal of applied physiology, 110(1), 153–160. https://doi.org/10.1007/s00421-010-1474-y

オールアウト形式のSITを実施すると、身体はダメージを負うことが想像できますが、その程度をきちんと調べた研究は多くはありません。
今回紹介する論文では、SIT後の神経筋系と自律神経系の回復度合いを報告しています。

論文概要

出典

Lloria-Varella, J., Koral, J., Ravel, A., Féasson, L., Murias, J. M., & Busso, T. (2023). Neuromuscular and autonomic function is fully recovered within 24 h following a sprint interval training session. European journal of applied physiology, 10.1007/s00421-023-05249-6. Advance online publication. https://doi.org/10.1007/s00421-023-05249-6

方法
25名のレクリエーショナルに活動的な健常者を対象
運動様式はサイクルエルゴメーター
SITは8×15秒-2分休息を実施
また、11名は4×30秒-4分休息も実施

■神経筋機能
膝関節伸展筋群の等尺性最大随意収縮(iMVC)とiMVC中・安静時の電気神経刺激に対する誘発力をSITの前、1日後、2日後に測定

■パワー-力-速度のプロフィール
サイクルエルゴメーターで2つの負荷を用いた7秒スプリントを実施
最大理論フォース(F0)、最大速度(V0)、最大パワー(Pmax)をSITの前、1日後、2日後に測定

■心拍変動(HRV)
睡眠時のHRV
SITをする前夜とSIT後の3晩測定

結果
■神経筋機能
2つのSITともに、前と24時間後、48時間後の測定値に有意差なし

■パワー-力-速度のプロフィール
2つのSITともに、前と24時間後、48時間後の測定値に有意差なし

■HRV
2つのSITともに、前と後の測定値に有意差なし

解説

この研究は、レクリエーショナルにアクティブな健常者を対象として、サイクリング形式で行われたSITにおける神経筋系と自律神経からみた回復が24時間で完了することを示しています。

同様に、レクリエーショナルにアクティブな健常者を対象とした先行研究では、サイクリング形式で行われた2回の30秒のスプリントとその間の4分間の休息、および4回の30秒のスプリントとその間の4分間の休息を実施した後の睡眠時のHRVについて、実施前と有意な差は報告されていませんでした。
Ye, Y., Tong, T. K., Kong, Z., Tao, E. D., Ying, X., & Nie, J. (2022). Cardiac autonomic disturbance following sprint-interval exercise in untrained young males: Does exercise volume matter?. Journal of exercise science and fitness20(1), 32–39. https://doi.org/10.1016/j.jesf.2021.10.002

一般的に、最大の力を出すSITはその高い負荷から、回復に時間がかかると一般的に考えられていますが、健康なアクティブな個人においては、24時間で十分な回復が見込めそうです。

ただし、競技力の高いアスリートの場合や、サイクリングではなくランニングで行われた場合には、異なる結果が得られる可能性があり、これについては今のところ不明です。

まとめ

SITを実施しても翌日には身体は十分に回復している模様