貧血リスクのある持久系アスリートは2部錬に慎重になった方がいいかもしれない

はじめに

以前、長距離ランナーがエネルギー不足の状態でトレーニングを行うと、安静時のヘプシジン濃度が顕著に増加することを紹介しました。

ヘプシジンとは、肝臓で産生され体内の鉄量を調整するホルモンです。
ヘプシジンには食事に含まれる鉄の体内への吸収を抑制する働きがあり、過度な増加は貯蔵鉄量の減少を誘発するとされています。

今回は、多くの長距離ランナーが実践する2部練を実施したときの鉄代謝を検証した論文を紹介します。

論文概要

出典

Ishibashi, A., Maeda, N., Kojima, C., & Goto, K. (2022). Iron Metabolism following Twice a Day Endurance Exercise in Female Long-Distance Runners. Nutrients, 14(9), 1907. https://doi.org/10.3390/nu14091907

方法
大学陸上部の長距離チームに所属する女性長距離ランナー13名を対象
対象者は習慣的に2部練習(朝:1時間、午後:2時間)を実施

ある1日を対象に計測・評価
血液サンプルは、6時(P0、空腹絶食状態)、14時(P8、朝練習8時間後)、20時(P14:午後練習3時間後)、翌日6時(P24、空腹絶食状態)に実施
ヘモグロビン、血清フェリチン、血清ヘプトグロビン、IL-6、血清鉄、血清フェリチンを評価
食事摂取状況も調査

結果
ヘモグロビン、血清フェリチン、血清ヘプトグロビン、IL-6:変化なし

血清鉄:P0に比べてP24で上昇
血清ヘプシジン:P0に比べてP8、P14、P24で上昇

1日を通した糖質摂取量:5.3-6.0g/kg

解説

この論文は、トレーニングをしない日や1部練習の日といった比較群が設定されていません。
そのため得られた結果が2部練習だからなのかは断定できません。
論文の著者らは、以前の研究でヘプシジンが運動終了から24時間後にはベースラインまで戻っていたことから、2部練習ではヘプシジン濃度の上昇がより長時間持続する可能性を指摘していました。

いずれにしても、この論文や他の研究を踏まえると、2部練習、エネルギー不足(特に糖質不足)といった身体負荷が高いイレギュラーな条件の場合、ヘプシジン濃度は上昇しやすいようです。
したがって、貧血リスクを抱えているランナーは、トレーニング負荷のマネジメントに一層気を配る必要があります。

まとめ

貧血リスクを抱える持久系アスリートはトレーニングの頻度に気をつけるといい