早く痩せるvsゆっくり痩せる 体組成と血液プロフィールへの効果

2021年7月26日

はじめに

以前にアスリートを対象とした減量スピードの違いに関する論文を紹介しました。
その論文を一言でまとめると、急速な減量(1週間当たりの体重減少率:1.4%)に比べると、緩やかな減量(1週間当たりの体重減少率:0.7%)の方が、身体組成や最大筋力に対して効果的であった、というものでした。

今回は、アスリートではなく、肥満者を対象として急速減量と緩やかな減量の効果を検証した論文を紹介します。

論文概要

出典

Ashtary-Larky, D., Ghanavati, M., Lamuchi-Deli, N., Payami, S. A., Alavi-Rad, S., Boustaninejad, M., Afrisham, R., Abbasnezhad, A., & Alipour, M. (2017). Rapid Weight Loss vs. Slow Weight Loss: Which is More Effective on Body Composition and Metabolic Risk Factors?. International journal of endocrinology and metabolism, 15(3), e13249. https://doi.org/10.5812/ijem.13249

方法
42名の過体重・肥満者(25<BMI<35)を対象

減量開始前に体重が安定していることを確認する期間が4週間設けられた
体重安定期間中に3日間の食事記録によって、1日の総エネルギー摂取量を推定した

対象者はランダムに2つのグループ(急速減量群、緩やかな減量群)に分けられた(二重盲検臨床試験研究)
減量率は少なくとも体重の5%に設定され、急速減量群は5週間、緩やかな減量群は15週間とした
→急速減量群:1日当たり1000-1500kcalのエネルギー不足になるように摂取カロリーを設定
→緩やかな減量群:1日当たり500-750kcalのエネルギー不足になるように摂取カロリーを設定

介入前後に身体組成、血液プロフィール、安静時代謝量、血圧を評価

結果
・減量プログラムを完遂したのは各群ともに18名であった(それぞれ3名の離脱者)
・予測されたとおり、体重減少率は同程度であった(急速減量群:6.0%、緩やかな減量群:6.2%)
・ウエスト周径囲(両群の差:1.52cm)とヒップ周径囲(両群の差:1.95cm)は、緩やかな減量群でより減少した
・体脂肪減少は、緩やかな減量群でより顕著であった
・除脂肪体重(≒筋肉量)、体水分量、安静時代謝量の減少は、急速減量群で顕著であった
・LDL、空腹時血糖、トリグリセリドの減少は、急速減量群で顕著であった

解説

ダブルブラインド(二重盲検法)という厳格な方法で行われた貴重な研究です。

この研究では、運動介入はなく食事制限によって減量をしています。
特に急速減量群の対象者は実験期間中、著しいカロリー制限を行いました。

体組成に対する効果が緩やかな減量群でのぞましかったのは、アスリートを対象とした研究結果とも一致しています。

一方、血液プロフィールについては急速減量群の方で著しい効果が認められました。

また面白いことに、途中離脱者は同数であったため、厳しい食事制限によって途中でリタイヤする人が増えることは起きませんでした
この理由について、考察ではすぐに体重が減ったことで動機付けされた可能性が指摘されています。

過度に体脂肪が蓄積している人の場合、減量初期は筋肉量を多少犠牲にしても、体重が減ることの喜びを感じることで、長期的な減量成功にもつながるのかもしれません。
もちろん、この場合でも長期的には減量スピードを緩めることや、筋肉量を維持・増加させることを目的とした筋力トレーニングを取り入れることも大切だと思います。

まとめ

太りすぎな人は、減量初期に厳しい食事制限によって体重を落としても血液プロフィールにはポジティブな効果が期待できる

減量

Posted by Health Freak