【温故知新シリーズ1】 食事の回数とダイエット(減量)効果との関係

はじめに

当サイトは発表されて間もない最新の論文を紹介することが多いです。
最新の論文とは言えない場合でも、発表されてから数年しか経過していない比較的新しい論文を紹介することがほとんどです。
これは健康に関する研究も日進月歩であり、数年・数十年前の時点では常識だったとしても今日では否定されている見解もあるからです。

一方、データが持つ価値そのものは時代が変わっても変化するものではありません。
実際、メディアの記事や専門家の見解の根拠となるエビデンスとして古い論文が使われることは多々あります。
(ときに著名の専門家が引用することで過大なインパクトを与えているケースも散見されますが)

そこで当サイトでも論文やメディアに引用されることの多い10年以上前に発表された論文を紹介していきます。
題して温故知新シリーズ。

第一回目は、食事の回数と体重減少効果との関係についてです。

一般にダイエット中は食事の回数を増やすアプローチが推奨されています
このアプローチの根拠としては、
・血糖値の急上昇を抑えることで脂肪蓄積を防ぐ(1回の食事量が増えると、インスリンの過剰分泌が起こる)
・過度な空腹状態をなくすことで除脂肪量(≒筋肉量)の分解を防ぐ(筋肉に常に栄養を供給する)
が挙げられています。

しかし、実際のところ1日の摂取エネルギーが等しい場合、食事の回数を増やすと1食当たりの摂取カロリーを抑える必要があるため、かえって食後の空腹感が強くなることも予想されます。
また、筋肉量がさほど多くない一般人が減量期に食事の回数を増やすとすると、1回で摂取できるカロリーは200-400kcalとなり、相当工夫しない限りは食事の質が低下する恐れもあります。

そこで今回は肥満者を対象として1日のエネルギー摂取量を統一した上で食事頻度が体重減少に及ぼす影響を検証した論文を紹介します。
この論文の発刊年は2010年であり、今日に至るまで40以上の論文に引用されている上、Web上での論文の影響度を示すAlmetric Attention Scoreは500を超えており、非常にインパクトの大きい論文です。

論文概要

出典

Cameron, J. D., Cyr, M. J., & Doucet, E. (2010). Increased meal frequency does not promote greater weight loss in subjects who were prescribed an 8-week equi-energetic energy-restricted diet. The British journal of nutrition, 103(8), 1098–1101. https://doi.org/10.1017/S0007114509992984

方法
18名を対象、16名(男女比1:1)が実験を完遂した
対象者は肥満(BMIが30以上45未満)、非糖尿病患者、非喫煙者、非妊娠者、Sedentary(定期的な運動習慣なし)
対象者は男女比が均等になるように下記の2群にランダムに割り当て
・High Meal Frequency(高頻度食群):3回の食事+3回の間食
・Low Meal Frequency(低頻度食群):3回の食事

実験期間は8週間
全対象者が-2931KJ/日(約-700kcal/日)のカロリー制限を実施
(毎日のエネルギー摂取量は個々で異なる)
食事はカナダ糖尿病協会が推奨する食品交換システムに従った内容をもとに摂取

低頻度食群は3食(朝・昼・晩)で規定の摂取カロリーを摂取
高頻度食群は3食と3回の間食で規定の摂取カロリーを摂取
高頻度食群の間食の摂取タイミングは、食後の満腹感の応答をもとに対象者ごとに決定

8週間の介入前後に下記項目を測定
・体重・BMI
・体脂肪量、除脂肪量(二重X線吸収法)

※その他、スナック食摂取後の満腹感や食欲に関するホルモン濃度の測定も実施(結果は割愛)

結果
・両群ともに体重、脂肪量、除脂肪量が減少したものの時間×群の交互作用はなかった
→体重:高頻度食群が114.1kg→109.5kg、低頻度食が101.0kg→95.7kg
→体脂肪量:高頻度食群が48.9kg→45.7kg、低頻度食が38.3kg→35.2kg
→除脂肪量:高頻度食群が62.1kg→60.3kg、低頻度食が58.4kg→56.2kg

解説

この論文は、摂取カロリーに差がなければ、食事の回数は減量効果に影響しないことを示しています
また、体重だけでなく体脂肪量、除脂肪量においても交互作用がなかった結果は、高頻度の食事を摂ったとしても、筋肉量の維持や体脂肪の減少に対する効果がアップしなかったことを示しています。
つまり、「ダイエット中は食事の回数を増やした方が良い」という一般的な説の効果を否定しています。

この論文の結果が示唆するとおり、中長期的な体重・体脂肪の増減は、第一に摂取カロリーに左右されると考えられます。
1日2食、あるいは3食で1食当たりに多くのカロリーを摂取することで満足度が高くなる人は低頻度食を採用すれば良く、1食当たりのカロリーは少ないものの、朝昼晩に加えて数回の間食を摂ることでストレスなく過ごせる人は高頻度食を採用した方が望ましいと言えます。
そしてそのアプローチの選択は、個人のライフスタイルや好みによって異なると考えられます。

まとめ

摂取カロリーが同じであれば、食事の回数は減量効果に影響しない