一人よりも仲間と歩くことで、健康効果が高まるかもしれない

2021年9月17日

はじめに

十分な身体活動を確保することは様々な利点があるにも関わらず、推奨される身体活動量を満たしている高齢者は多くはいません。

これまでの研究によると、高齢者は同年代の仲間と一緒に運動することを好むことや、仲間の存在が運動に対する動機付けに好影響を与える可能性が指摘されています。

今回紹介する研究では、高齢者を対象として、少なくとも週1回は仲間と歩いていた人達が、主に1人で歩いていた人達に比べて健康効果に良い影響があったのかを検証しています。

論文概要

出典

Kritz, M., Thøgersen-Ntoumani, C., Mullan, B., Stathi, A., & Ntoumanis, N. (2020). “It’s Better Together": A Nested Longitudinal Study Examining the Benefits of Walking Regularly With Peers Versus Primarily Alone in Older Adults. Journal of aging and physical activity, 1–11. Advance online publication. https://doi.org/10.1123/japa.2020-0091

方法
ある地域に住む退職後の身体的不活動状態な高齢者(60歳以上)を対象として行われた16週間のトライアル参加者136名のうち、後半8週間に少なくとも週1回以上ウォーキングをしていた79名を分析対象

トライアル前後に身体組成、歩行テスト、身体活動量、歩くことへの動機、歩くことへの自己効力感などを評価

結果
対象者は下記の2群に分類された
・仲間と歩いたグループ(those who also walked with peers: WP):43名
・一人で歩いたグループ(those who primarily walked alone: WA):36名

主な結果の抜粋
・身体活動量は、トライアル後にWPで増加していた
・歩行テストの成績は、トライアル後にWPで増加していた
・体脂肪やウエスト周径囲は、トライアル後にWPで減少していた
・歩くことへの自律的な動機や自己効力感は、トライアル後にWPで増加していた

解説

どのような運動であっても、継続しない限り良い効果は期待できません。
また、一過性に良い効果が得られたとしても、運動習慣がなくなってしまえば、元通りになってしまうこともあります。

この論文は因果関係を示すものではないものの、仲間と歩くことで歩くことへのモチベーションが高まり、体組成や身体機能に対して好影響を及ぼしたことを示唆しています。

歩行やランニングといった比較的単純で飽きやすい運動であっても、気の合う仲間と一緒に取り組むことであっという間に時間が経ったという経験は、少なからずの人が実感したことがあるのではないでしょうか。

コロナ渦では不特定多数と一緒に運動することは難しいですが、家族や恋人などと一緒に歩くことは、我々の心身を健康にしてくれるかもしれません。

まとめ

高齢者のウォーキングは、一人で歩くよりも仲間と歩くことで良い効果が期待できる