コロナ渦でデジタルプラットフォームは身体活動を高めるために重要な役割を持っている

2021年9月24日

はじめに

十分な身体活動の確保は、身体的・精神的な健康に有益なことは周知の事実であるのにも関わらず、現代社会では多くの人が推奨されている活動量を満たせていません。

それに加え2019年から猛威をふるい続けているCOVID-19の影響によって多くの国の政府は、緊急事態宣言、都市閉鎖・ロックダウンなどの対策をとったため、室内のジムやスポーツクラブでの運動に制限が掛かりました。
したがって、人によってはコロナ渦では以前と比べて運動習慣を確保しづらい状況に陥っていると言えます。

一方、近年ではネット技術の進歩によって、ストリーミングやフィットネスアプリ、オンラインレッスンといったデジタルプラットフォームを用いて運動できる環境が整いつつあります

今回は、オーストラリアで行われた調査をもとに、COVID-19の感染拡大によってステイホームが強いられた期間中にデジタルプラットフォームを利用していた人と利用していない人で身体活動量に差があったのかを検証した論文を紹介します。

論文概要

出典

Parker, K., Uddin, R., Ridgers, N. D., Brown, H., Veitch, J., Salmon, J., Timperio, A., Sahlqvist, S., Cassar, S., Toffoletti, K., Maddison, R., & Arundell, L. (2021). The Use of Digital Platforms for Adults’ and Adolescents’ Physical Activity During the COVID-19 Pandemic (Our Life at Home): Survey Study. Journal of medical Internet research, 23(2), e23389. https://doi.org/10.2196/23389

方法
調査はオンライン上で2020年5月に実施
対象者はソーシャルメディアの広告などを通して募集
オンライン調査のリンクにクリックした人は合計14,764人、うち6474人からインフォームドコンセントを取得
6474人のうち、本論文の分析対象者は身体活動やデジタルプラットフォームに関する調査に完了した成人1188人(平均年齢37.4歳、女性の割合:82.5%)と青年963人(平均年齢16.2歳、女性の割合:71.1%)

参加者は、人口統計学的情報、身体活動のためのデジタルプラットフォームの利用状況、中-高強度の身体活動(Moderate-to vigorous-intensity physical activity: MVPA)と筋力トレーニング(Muscle-strengthening exercises: MSE)の実施状況を回答

デジタルプラットフォームの利用状況の調査項目は下記のとおり
・活用の有無
・頻度
・時間
・種類(YouTubeなどのストリーミングサービス、アプリやオンラインのサブスクリプションサービス、Zoomなどを活用したオンラインでのライブ・録画のレッスン、スポーツ組織による特定のスポーツや活動に特異的なアプリ、アクティブなゲーム、Zwiftなどのオンラインやデジタル上のレーシングプラットフォーム)

MVPAとMSEは、頻度や量(時間)が成人と青年のガイドラインの基準を満たしているか調査

結果
・成人の39.5%(469/1188人)、青年の26.5%(255/963)が身体活動のためにデジタルプラットフォームを利用

・デジタルプラットフォームの中で最も使われていたものは、ストリーミングサービス(成人:42%、青年40%)、次いでオンラインレッスン(成人30.7%、青年30.2%)であった

・デジタルプラットフォームの利用者の特性について性差が認められ、成人・青年ともに女性の利用率が高かった

・成人では、デジタルプラットフォームを利用している人は利用していない人よりもMVPA(オッズ比:2.0)、MSE(オッズ比:3.3)、MVPA・MSEの両方(オッズ比:2.7)についてガイドラインの基準を満たしている割合が高かった

・青年では、デジタルプラットフォームを利用している人は利用していない人よりもMVPA(オッズ比:2.4)、MSE(オッズ比:3.1)、MVPA・MSEの両方(オッズ比:4.3)についてガイドラインの基準を満たしている割合が高かった

解説

この論文はコロナ渦では、デジタルプラットフォームは十分な身体活動レベルを確保するために重要な役割を持っていることを示唆しています。

興味深い結果として、デジタルプラットフォームの利用割合には性差があり、女性の利用率が高かったことです。
この結果について論文の著者らは、女性は情報のシェア、セルフモニタリングなどが身体活動を高めるモチベーションになるのに対し、男性では集団スポーツやウエイトトレーニングに取り組む傾向があり現状のデジタルプラットフォームの利用には適していないことを指摘していました。

YouTubeなどのストリーミングサービスは必ずしも質の高い動画が提供されているわけではありませんが、無料で多くの人がアクセスできるというメリットがあります。
日本でもこの1年間で多くのトレーニング系Youtuberが誕生しましたが、コロナ渦の人々の身体活動を高めるために一役買ったには違いありません。

まとめ

コロナ渦ではデジタルプラットフォームの利用は身体活動を高めるのに有効