COVID-19流行によって日本人高齢者の身体活動量は低下した模様

2021年9月13日

はじめに

当サイトではこれまでに複数の観点からCOVID-19の感染流行が健康に及ぼす影響に関する論文を紹介してきました。
例えば、閉経後女性(中高齢者)を対象としてヨーロッパで行われた調査によると、COVID-19パンデミック中の精神衛生(不安レベル)と身体活動レベルとの間には負の相関関係があり、身体活動レベルが低い人ほど不安症状が強い傾向があったことが報告されています(リンク)。

特に高齢者における十分な身体活動量の確保は、転倒予防や病気の発症リスクの低下といった観点からも重要です。

そこで今回は日本人高齢者の身体活動量がCOVID-19の感染前(2020年1月)と比べて感染拡大中(2020年4月)にどう変化したのかを調査した論文を紹介します。

論文概要

出典

Yamada, M., Kimura, Y., Ishiyama, D., Otobe, Y., Suzuki, M., Koyama, S., Kikuchi, T., Kusumi, H., & Arai, H. (2020). Effect of the COVID-19 Epidemic on Physical Activity in Community-Dwelling Older Adults in Japan: A Cross-Sectional Online Survey. The Journal of Nutrition, Health & Aging, 1–3. Advance online publication. https://doi.org/10.1007/s12603-020-1424-2

方法
2020年4月23-27日にオンラインアンケートを実施
対象者は都市部(東京、神奈川、埼玉、愛知、大阪、兵庫、福岡)在住の65-84歳の男女

調査項目は下記のとおり
身体活動量:国際標準化身体活動量質問票(短縮版)を利用し2020年1月と4月の状況を回答
フレイル度の評価:厚生労働省の基本チェックリストを回答
人口統計学データ:年齢・性別・身長・体重・BMI、1人暮らしかどうか・投薬回数・罹患率・健康へのリテラシー

結果
・アンケート回答者の特性は、年齢が平均74歳、男女比が1:1、フレイルと評価された割合24.3%(388名)であった

・アンケート回答者全体を対象とした場合、身体活動量は1月と比べて4月で26.5%減少(245分/週→180分/週、中央値)

・フレイルの度ごとにみたところ、健常者(330分/週→210分/週、中央値)、プレフレイル者(270分/週→180分/週、中央値)、フレイル者(123分→85分/週、中央値)のいずれも1月と比べて4月で減少

解説

フレイルとは、加齢に伴い身体の予備能力が低下し、健康障害を起こしやすくなった状態のことであり、介護が必要となる前段階状態とも言われています。

この論文では、都市部に住む日本人高齢者を対象としてオンラインアンケートを実施したところ、どのフレイル度においても1月に比べて4月の身体活動量が低下していたことを明らかにしました。

この論文には下記に示す研究の限界があります。
・都市部に住んでいる人を対象としており、他地域の高齢者の状況は不明
・オンラインアンケートに回答できる人(インターネット接続環境にあり機器を利用できる人)を対象としており、IT機器を使っていない人については不明
サンプルバイアスがあり、日本人高齢者全体の傾向と異なる可能性が高い

身体活動量は、回答者の主観に基づいており、加速度計などを使い客観的に定量していない

とはいっても、COVID-19流行中の日本人の身体活動量を評価した論文は不足しています。
したがって、この論文は、貴重なデータであるとともに、高齢者の身体活動量を維持・高める取り組みの必要性を示しています。

 

まとめ

COVID-19流行によって日本人高齢者の身体活動量は低下