8時間ダイエットは長距離ランナーにとって有益か?

はじめに

8時間ダイエット(8:16 ダイエット)は、その名のとおり、1日(24時間)のうち8時間以内に全ての食事を摂るアプローチであり、食事時間制限法(Time Restricted Feeding: TRF)の一つです。

TRFに関しては、一般人や肥満者を対象として、多くの研究が行われています。
その結果を概括すると、1日のうち食事をとれる時間を減らすことで、摂取エネルギーが減少し、体重・体脂肪も落ちることが多いようです。
しかし、摂取エネルギーが均等の場合、TRFが通常の食事に比べて体重・体脂肪を効果的に落とせるのかは定かではありません

近年ではアスリートを対象として、8時間ダイエットの有効性に関する研究を行われています。
男性ランナーを対象とした研究によると、8時間ダイエットは通常の食事に比べると、1日の摂取エネルギーが減り、体重も減少しています。
しかし、その論文では、酸素摂取量、ランニングエコノミー、血中乳酸濃度、心拍数といったパフォーマンスと関係する生理学的指標については、効果をもたらしませんでした。
(引用:Brady, A. J., Langton, H. M., Mulligan, M., & Egan, B. (2021). Effects of 8 wk of 16:8 Time-restricted Eating in Male Middle- and Long-Distance Runners. Medicine and science in sports and exercise, 53(3), 633–642. https://doi.org/10.1249/MSS.0000000000002488

今回紹介する論文は、男性長距離ランナーを対象として、1日の摂取エネルギーを統一した上で8時間ダイエットと通常の食事(12時間ダイエット)の効果を比較検証しています。

論文概要

出典

Tovar, A. P., Richardson, C. E., Keim, N. L., Van Loan, M. D., Davis, B. A., & Casazza, G. A. (2021). Four Weeks of 16/8 Time Restrictive Feeding in Endurance Trained Male Runners Decreases Fat Mass, without Affecting Exercise Performance. Nutrients, 13(9), 2941.

方法
クロスオーバー試験
27名の健康的な男性持久性ランナー(週間走行距離:32km以上)を対象
ただし、途中離脱などによって最終的なデータ分析対象者は15名

対象者は2条件(各条件の実施期間:4週間、条件間のウォッシュアウト期間:約2週間)の試行をランダムに実施
条件は下記のとおり
・伝統的な12時間ダイエット(12時間ダイエット)
・8時間ダイエット

12時間ダイエットは1日のうち12時間以内、12時間ダイエットは8時間以内に全てのカロリーを摂取
それ以外の時間帯は、水やブラックコーヒー、ストレートティーなどの非カロリー飲料の摂取のみ許可

実験開始前にトレッドミルテストで最高酸素摂取量(VO2peak)などを測定
実験期間中はMyFitnessPalアプリを用いた食事調査(3日/週)とトレーニング状況の評価を実施

各介入期間の前後に下記項目を測定
・形態・身体組成
体重、身長、除脂肪量・脂肪量・体脂肪率(二重X線吸収法)

・最大下ランニングテスト
60%・70%・80%・90% VO2peak走行時の酸素摂取量、二酸化炭素排出量、換気量、心拍数など

・10kmタイムトライアル

結果
・トレーニング状況は条件間で有意差なし

・総摂取エネルギー、糖質摂取量、タンパク質摂取量、脂質摂取量は条件間で有意差なし

・脂肪量は8時間条件(-0.8kg)が12時間条件(+0.1kg)に比べて顕著に低下

・除脂肪量、体重は両条件ともに変化なし

・最大下ランニングテスト中の血中乳酸濃度、二酸化炭素排出量は16/8条件で減少

・10kmタイムトライアルは両条件ともに変化なし

解説

この論文は、男性長距離ランナーを対象とした場合、1日の総摂取エネルギーが均等であっても食事時間を8時間に制限することで、脂肪量が効果的に減少したことを示しています。

食事調査が週当たり3日の頻度であり、介入期間中のすべての食事を分析していない点に注意を要しますが、条件間での総エネルギー摂取に有意差がなかった上で、脂肪量の減少量に差が認められたことは、非常に興味深い結果です。
この理由について、論文の著者らは、1日のうち断食時間を長くとることで、脂肪酸の酸化が亢進した可能性を指摘しています。

除脂肪量は条件間で有意差がなかった結果を踏まえると、特に体脂肪が多めの長距離ランナーにとって、8時間ダイエットは有益なアプローチとなる可能性があります。

ただし、当サイトで以前に紹介したケトジェニックダイエットと同様に、8時間ダイエットは、長距離ランナーにとって王道とは言えないアプローチです。
緻密な計算なしで何となく食事時間を制限すると、総エネルギー摂取量不足を招きやすく、パフォーマンスに負の影響を与える可能性が高まります。
また、この論文でも10km走には改善が認められていないため、持久系パフォーマンスを向上させる効果はないと言えます。
したがって、仮に実践する場合、栄養計算をした上で、実際に試した感覚を把握しながら、ネガティブな影響を最小限にする工夫が求められます。

まとめ

8時間ダイエットは長距離ランナーの体脂肪を効果的に減らすかもしれない