日本人オリンピアンは一般人よりも長生き

2022年12月13日

はじめに

死亡率や生存率といった寿命に関する指標は、健康科学分野でアウトカムとして頻繁に活用されています。
当サイトでもこれまでに、死亡リスクと各要因との関係を検証した論文を紹介してきました。



今回は、日本人を対象として、オリンピアンと一般人口の死亡率を比較した論文を紹介します。

論文概要

出典

Takeuchi, T., Kitamura, Y., Sado, J., Hattori, S., Kanemura, Y., Naito, Y., Nakajima, K., Okuwaki, T., Nakata, K., Kawahara, T., & Sobue, T. (2019). Mortality of Japanese Olympic athletes: 1952-2017 cohort study. BMJ open sport & exercise medicine, 5(1), e000653. https://doi.org/10.1136/bmjsem-2019-000653

方法
1952年から2016年に開催された夏季・冬季五輪に出場した日本人アスリート3546人のうち、生存状況が確認できなかった者などを除いた3381人を最大で2017年末まで追跡

SR/OLYMPIC SPORTSやWikipediaなどのオンラインソースをもとに情報収集

年齢や性別を考慮した上で一般人口と比較した標準化死亡比(Standardized Mortality Ratio; SMR)を算出
オリンピックの参加回数(1回、2回、3回以上)、種目の強度(筋収縮や心血管系への負荷をもとに9段階に分類)による死亡率の違いも分析

結果
全分析対象者のSMRは0.29(95%信頼区間:0.25-0.34)

オリンピアン内で比較すると、出場回数が2回(調整済Rate ratio: 1.52、95%信頼区間:1.04-2.23)、3回(同: 1.87、同:1.08-3.25)の者で死亡率が高くなった
しかし、五輪に3回以上参加した人であっても、死亡率は一般人口より低かった

種目別にみると、筋収縮・心血管系への負荷がともに低強度の種目に比べると、筋収縮が中強度で心血管系が低強度を除いた7種目で調整済RRが1.0を超えていた(ただし、95%信頼区間の下限は1.0を下回っている種目もあった)
なお、筋収縮・心血管系への負荷が低強度の種目はカーリング、ゴルフ、射撃が該当し、筋収縮が中強度で心血管系が低強度の種目はアーチェリー、水泳の飛込、乗馬が該当

解説

日本人を対象とした興味深い論文です。

「アスリートは健康なのか」というテーマは、定期的に話題にあがります。
この論文では健康指標として扱われることのある死亡率を一般人口と比較した結果、オリンピアンの方が長寿なことを示しました。
また、五輪への参加回数が1回の者に比べると、2回、3回以上のオリンピアンでは死亡率が高くなりましたが、そういった者でも一般人口と比べると、死亡率が低いことには変わりません。

死亡率が低いからといってWHOの定義で言う健康とは必ずしも言えませんが、競技スポーツは健康に悪いという俗説を否定する一つの見解にはなります。

まとめ

五輪出場者は一般人口に比べると長生きする