スロートレーニング・スクワットは初心者トレーニーの大腿四頭筋の筋肥大・筋力向上に有効

2021年9月29日

はじめに

スロートレーニングとは、その名の通りゆっくりとした動作で行う筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)です。
研究ではLow intensity, Slow and Tonic Force Generation(LSD)、日本語に訳すと筋発揮張力維持法と呼ばれています。

筋肥大を目的としたレジスタンストレーニングでは最大挙上重量の65%(65%1RM)以上の重量を用いて行うことが多いですが、スロートレーニングでは50%1RM程度の重量であっても筋肥大効果が得られることが明らかになっています。

スロートレーニングによる筋肥大のメカニズムは完全には分かっていませんが、筋肉が力を発揮し続けることで血流制限が起き、筋肉内の酸素レベルが低下することが筋肥大の刺激となると言われています。

具体的な実施方法は様々なバリエーションがありますが、いずれも筋発揮張力を維持し続けることにポイントがあります。
多くの場合、短縮性収縮・伸張性収縮ともに3秒以上かけ、ゆっくりとした動作で行います。
また、動作中は筋肉が休む瞬間を作らないよう、関節を伸ばし切った状態で休まないこともポイントです。

スロートレーニングは、扱う重量の軽さから関節や腱への負担が比較的軽微であることや、ゆっくりとした動作で呼吸も止めずに行うために血圧の上昇が少ないといったメリットがあります。

今回はスロートレーニングで行われたバーベルスクワットの効果を検証した論文を紹介します。

出典

Akagi, R., Sato, S., Hirata, N., Imaizumi, N., Tanimoto, H., Ando, R., Ema, R., & Hirata, K. (2020). Eight-Week Low-Intensity Squat Training at Slow Speed Simultaneously Improves Knee and Hip Flexion and Extension Strength. Frontiers in physiology, 11, 893. https://doi.org/10.3389/fphys.2020.00893

方法
過去1年以上下半身のレジスタンストレーニングを実施していない24名の若年男性をランダムに下記の2群に分類
・トレーニング群(12名)
・コントロール群(12名)

トレーニング群のトレーニング内容は下記のとおり
種目:パラレルバーベルスクワット
頻度:3回/週
期間:8週間
重量:40%1RM
反復回数:8回
セット数:3セット
休息時間:3分
収縮時間:4秒/4秒(短縮性収縮/伸張性収縮)

8週間のトレーニング期間前後に下記の項目を測定
・スクワットの挙上重量(3RMスクワット)
・膝関節・股関節の伸展・屈曲の等尺性最大収縮トルク
・大腿四頭筋・ハムストリングスの筋肉量(MRI)

結果
・トレーニング群の等尺性最大収縮トルクは、膝関節・股関節ともに屈曲トルクに比べて伸展トルクで著しく増加(ただし、屈曲トルクも増加していた)

・トレーニング群の3RMスクワットは、33%増加

・トレーニング群の筋肉量はハムストリングスで変化がなかったが、大腿四頭筋で増加(大腿直筋:3.8%、外側広筋:11.2%、中間広筋:7.5%、内側広筋:10.5%)
・トレーニング群のトレーニング前後の大腿四頭筋の筋肉量の変化率と膝関節伸展トルクの変化率は相関していた

解説

トレーニング種目がバーベルスクワットのみというシンプルなトレーニング実験です。
8週間と、トレーニング期間がさほど長くはありませんが、筋力向上に加え筋肥大も起きています。
この結果をみると、トレーニング初心者であれば、大腿四頭筋の筋肥大を狙うためには、スロートレーニングのバーベルスクワットだけで十分な刺激が得られると言えます。
また、論文の著者らは、筋電図の計測結果にもとづき、膝関節伸展筋力の増加は神経筋の適応よりも筋肥大の貢献が大きかったと考察しています。

一方、膝関節屈曲筋であるハムストリングスは、スクワットだけでは大腿四頭筋と比べて十分なトレーニング効果が得られないようです。
この結果は、以前に紹介した論文の結果とも一致します。


原因を推察すると、大腿二頭筋短頭以外のハムストリングス(大腿二頭筋長頭・半腱様筋・半膜様筋)が股関節と膝関節をまたぐ二関節筋であるため、スクワット動作では筋肉の長さ変化が少ないことが関係していると思われます。

たとえ40%1RMであっても、4秒-4秒のリズムでパラレルスクワットを8回繰り返すと、息は少なからず上がりますが、休息時間が3分であれば次のセットの開始前には呼吸が十分に整うと思います。
さらに高重量のスクワットでは、下半身よりも体幹の姿勢が維持できなることで、回数をこなせなくなることがありますが、この方法であれば下半身を安全に追い込みやすいと思います。

以上をふまえると、特に経験の浅いトレーニーにとっては、この実施方法は下半身のメイン種目として取り入れる価値があると思います。
また、大腿部をバランスよく筋肥大させたい場合、レッグカールを数セット加えるだけでハムストリングスの筋肥大効果が高まると思われます。

まとめ

筋トレ経験の浅いトレーニーは、スロートレーニングのバーベルスクワットで大腿四頭筋の筋肥大が狙える