朝食を欠損すると昼食で補っても夕方の持久性パフォーマンスが低下する

はじめに

以前、レジスタンストレーニングの効果を高めるための方策として、朝食の十分なタンパク質摂取の重要性を示す論文を紹介しました。



今回は持久性スポーツにおける朝食の重要性を示す研究をみていきます

持久性スポーツの主なエネルギー源の一つは、筋肉や肝臓に蓄えられたグリコーゲン(糖質の一種)です。
そのため、マラソンなど運動時間が90分以上となる持久性スポーツでは、グリコーゲンローディングと呼ばれる方法を用いて、競技前数日間にわたり体内の糖質蓄積量を高めることがあります。

また、グリコーゲンローディングとまではいかなくても、競技の4時間前までに十分な糖質(体重1kg当たり1-4g)を摂取することで持久性スポーツやサッカーなどの高強度間欠的スポーツのパフォーマンスに好影響を与えます。

今回は普段通りに朝食と昼食を摂った場合と朝食を欠損した場合(ただし昼食で朝食欠損分を含めて摂取するため総エネルギー・糖質摂取量は同一)では夕方の持久性パフォーマンスに差が生じるのかを検証した論文を紹介します。

論文概要

出典

Metcalfe, R. S., Thomas, M., Lamb, C., & Chowdhury, E. A. (2021). Omission of a carbohydrate-rich breakfast impairs evening endurance exercise performance despite complete dietary compensation at lunch. European journal of sport science, 21(7), 1013–1021. https://doi.org/10.1080/17461391.2020.1797890

方法
11名の持久性アスリート(トライアスリート・ロードサイクリスト)を対象
運動・テストの様式は自転車運動

■プレ測定
・形態(身長・体重)
・漸増負荷試験
・20kmタイムトライアル(20kmTT)の慣れ試行

■本測定
ランダム化クロスオーバーデザイン
条件は下記の二つ

朝食あり(Breakfast: B):
8-9時に高糖質の朝食を摂取(1日のエネルギー需要量の20%)
12-14時に昼食を摂取(1日のエネルギー需要量の30%)

朝食欠損(No Breakfast: NB):
朝食なし(前日の22時以降、正午まで絶食状態を維持)12-
高糖質の昼食を摂取(1日のエネルギー需要量の50%)

20kmTTの実施方法は下記のとおり
・昼食後4-5時間経過した17-19時に実施
・W-upは10分@40%Wmax(W-upの糖質・脂質利用量、エネルギー消費量を計測)
・W-up後に20kmTTを実施
・評価指標はパワー(W)、タイム、心拍数、血糖値、血中乳酸濃度、主観的運動強度(RPE)

その他、100mmの尺度を用いて食欲を起床後、朝食後、朝食1時間後、昼食前後、昼食1時間後、20kmTT前に評価

結果
・食欲は条件×時間の交互作用あり
→起床時は群間差なし、朝食後・朝食1時間後はNBで高値、昼食後・昼食1時間後・20kmTT前はBで高値

・20kmTT前のW-upの糖質・脂質の酸化量に群間差あり
→NBは糖質酸化量が高く、脂質酸化量が低い

・20kmTTのタイムはBで短い(B:1075秒、NB:1113秒)

・20kmTTの心拍数、血糖値、血中乳酸濃度は群間差なし

・20kmTTのRPEに条件×時間の交互作用あり
→2500m時点でNBが高値、以降は群間差なし

解説

この論文は、条件間で総摂取エネルギー・糖質摂取量を統一していることに価値があります。
(仮に不統一の場合、結果が朝食欠損によるものなのか、総摂取エネルギー・糖質摂取量の差によるものなのか分からない)

得られた結果は、朝食を欠損すると、たとえ昼食で欠損分を補っても、夕方の持久性パフォーマンスに悪影響を及ぼすことを示しています。
つまり、競技の開始時刻が夕方の場合、それまでの総エネルギー・糖質摂取量よりも、摂取のタイミングによってパフォーマンスが影響を受けることを意味しています。

論文の著者らはこの結果の理由について、生理学的・心理学的の両面が影響した可能性を述べています。

生理学的要因については、NBでのW-up中の糖質酸化量の高さをもとに、摂取した糖質が20kmTT前までに完全に消化吸収されていなかったために、筋肉や肝臓にグリコーゲンとして蓄えられなかった可能性を述べています。
ただし、仮にその現象が起きたとしても、それが20kmTTのタイムトライアルに影響を及ぼすものなのかは不明です。

心理学的要因については、プラセボ効果の影響を挙げています。
この論文の対象者は、条件間で同じ量の食事を摂取していることを理解していました。
しかし、一般的にアスリートは、朝食を食べるとパフォーマンスに好影響が期待できると認識しているため、20kmTTのペースやパワー発揮に影響を及ぼしたと推察しています。

まとめ

競技開始時間が夕方であっても、持久性アスリートは朝食を食べた方が良い