筋トレvs有酸素vs筋トレ+有酸素 高齢者の健康度を高めるアプローチは?

はじめに

一口に「トレーニング」といっても、有酸素性トレーニングと筋力トレーニングでは身体にかかる負荷が異なるため、得られる効果も変わります。
一般に、有酸素性トレーニングは全身持久力の改善に効果的なのに対し、筋力トレーニングは筋力や除脂肪体重(≒筋肉量)の増加に有効と言われています。

また、両トレーニングともに、糖・脂質代謝に関する血液プロフィールの改善も期待できることが明らかになっています。

このような身体組成・機能は、通常加齢に伴い低下し、様々な疾病の発症にも関係します。
したがって、高齢者においてもトレーニングによって身体に適切な刺激を与えることは健康度を維持・向上する上で重要です。

また最近では二つのトレーニングを並行して行う複合トレーニングは、双方のトレーニングで得られるメリットを受けれることも分かりつつあります。
しかし、これまでに行われたトレーニング実験の多くは、各グループの運動時間が統一されていないため(複合トレーニングを実施したグループの合計運動時間が長いことが多い)、その効果が複合トレーニングによる効果なのか、単純に運動時間が増えた結果なのか、分かっていませんでした。

今回紹介する論文は、トレーニング時間を統一した上で、1) 有酸素性トレーニング、2) 筋力トレーニング、3) 複合トレーニングの効果を検証しています。

論文概要

出典
引用元
Timmons, J. F., Minnock, D., Hone, M., Cogan, K. E., Murphy, J. C., & Egan, B. (2018). Comparison of time-matched aerobic, resistance, or concurrent exercise training in older adults. Scandinavian journal of medicine & science in sports, 28(11), 2272–2283. https://doi.org/10.1111/sms.13254

方法
対象者は65歳以上の高齢者男女86名(2名が途中で離脱したため最終的には84名)

下記の4群にランダムに分類
・コントロール群(CON):トレーニングなし
・有酸素性トレーニング群(Aerobic exercise: AER):有酸素性トレーニング
・筋力トレーニング群(Resistance exercise: RES):筋力トレーニング
・複合トレーニング群(Concurrent aerobic and resistance exercise: CEX):有酸素性トレーニング+筋力トレーニング

トレーニング内容は下記のとおり
期間:12週間
頻度: 3回/週
量:72分/週
有酸素性トレーニング:最大心拍数の80%強度でのマシンを用いた間欠的運動
筋力トレーニング:マシンを用いたサーキット形式のトレーニング(60秒運動―30秒休息)、最初は60%1RM強度から実施
CEXはAERとRESのトレーニング量を半分ずつ実施

トレーニング前、6週間後、12週間後に身体組成・身体機能・代謝マーカーを評価

結果
トレーニングセッションへの参加率は平均88%(グループ間で有意差なし)

下記はグループ内のトレーニング前と12週間後の比較結果
・握力:RES、CEXで増加
・歩行スピード:CEXで増加
・立ち上がりテスト:RES、CEXで改善
・アップアンドゴーテスト(パフォーマンス):AER、RES、CEXで改善
・1RMチェストプレス(上半身の筋力):RES、CEXで改善
・1RMレッグプレス(下半身の筋力):AER、RES、CEXで改善
・上肢の除脂肪量:RES、CEXで改善
・下肢の除脂肪量:変化なし
・体幹の脂肪量:CEXで減少
・チェスターステップテスト(全身持久力):AER、RESで改善
・モントリオール・コグニティブ・アセスメント・テスト(認知機能):AER、RES、CEXで改善
・代謝マーカー(コレステロール、HDL、LDL、血糖値など):変化なし

解説

規模の大きな実験です。
論文では6週間後の中間測定や、群間の変化率の比較も検証しています。

この論文で測定しているように、健康に関係する要素には様々なものがあります。
その中でも、複合トレーニングは、比較的多くの指標でトレーニング効果が認められました
特に、高齢者の生活機能と深く関わる歩行スピードの改善は、他の群では起きていないことは注目に値します(しかし、6週間後では他の群でも改善が認められていました)。
また、体幹の脂肪量も複合トレーニング群でのみ低下したことから、有酸素性トレーニングと筋力トレーニングを並行して行うことは、身体組成の改善にも有効だと言えます。

・有酸素性トレーニングと筋力トレーニングでは身体への刺激が異なること
・身体は刺激に応じて適応すること
を踏まえると、健康のためにはどちらか一方を良いと決めつけることなく、両トレーニングを定期的に実施していく方が望ましいのかもしれません。

まとめ

高齢者の健康度を高めるためには、有酸素性トレーニングと筋力トレーニングを並行して行うプログラムが有効