筋トレをしている人は2型糖尿病になるリスクが低い:日本人を対象とした疫学調査

はじめに

疫学(疫学調査)とは、ある集団を対象として、病気の頻度やその分布に影響する因子を統計学的に研究する学問のことをいいます。

疫学は公衆衛生や予防医学への基礎的な知見や、疾病・疾患への危険要因や最適な治療方針を決める上でのエビデンスを提供します。

当サイトでも以前、アメリカで行われた疫学調査の論文をもとに、全死亡率が膝関節伸展筋力と密接に関係していることを紹介しました。


今回は日本で行われた調査をもとに、筋力トレーニングと2型糖尿病の発症リスクに関する疫学研究を紹介します。

論文概要

出典
Kuwahara, K., Honda, T., Nakagawa, T., Yamamoto, S., Nanri, A., Kurotani, K., Hayashi, T., & Mizoue, T. (2015). Strength training and risk of type 2 diabetes in a Japanese working population: A cohort study. Journal of diabetes investigation, 6(6), 655–661. https://doi.org/10.1111/jdi.12347

方法
日本の複数の企業の労働者を対象として行われた「労働者の健康に関する疫学研究」の一部
2006年の定期健康検査を受診した者を最大で6年間(2013年まで)追跡

2006年をベースラインとし、ベースライン時点での筋力トレーニングの実施状況とその後の2型糖尿病の発症との関係を交絡因子(年齢、性別、シフトワークの有無、仕事中の身体活動レベル、喫煙歴、アルコール消費、睡眠時間、有酸素性運動の実施状況、高血圧、家族の糖尿病の既往歴、BMI)の影響を考慮した上で検証

結果
・分析対象者26630人(平均年齢45.3歳)のうち、1770人が追跡期間中に2型糖尿病を発症(平均追跡年数5.2年)

・ベースラインにおいて、1090人(4.1%)が60分/週以上の筋力トレーニングに取り組んでいた

・年齢と性別を調整後のハザード比は、筋力トレーニングを取り組んでいない人と比較して、筋力トレーニングを取り組んでいた人で0.58(0.42-0.79:95%信頼区間)

・その他の交絡因子を調整後のハザード比は、0.66(0.48-0.90)

解説

ハザード比とは相対的な危険度を比較する手法です。
今回紹介した論文の場合、ベースラインの時点で筋力トレーニングに取り組んでいなかった人のハザード比を1とし、筋力トレーニングを実施していた人のハザード比が1より小さい場合、2型糖尿病の発症リスクが低いという解釈になります。

結果は、仕事中の身体活動レベル、喫煙歴、アルコール消費などの交絡因子を考慮したとしても、筋力トレーニングを実施していた人たちは2型糖尿病の発症リスクが30%以上低いことを示しています。

この論文は、筋力トレーニングの実施状況について簡単なアンケートで定量したのみであり、詳細な状況(例えば器具の利用の有無、強度、量)との関係は検証できていません。
また、筋力トレーニングの実施状況はベースライン時点でのみ評価しているため、その後の継続の有無との関係も検証できていません。

このような限界はあるものの、筋力トレーニングと2型糖尿病との関係を検証した疫学研究のうち、日本で行われた他の研究は見当たらないため、筋力トレーニングの意義を伝えるには非常に意義のあるデータです。

まとめ

筋トレ愛好家は、2型糖尿病になるリスクが低い

広告