若年男性の場合、たとえタンパク質を多めに摂ってもカロリー制限をすれば除脂肪量は減少するようだ

2021年10月15日

はじめに

一般人、肥満者、アスリートを問わず体重減少を試みる際は除脂肪量(≒筋量)をできる限り維持しながら脂肪量を減らすことによって体重を落とすことが大事になります。

食事制限によって体重減少を試みた多くの研究は、減量後の除脂肪量の減少を認めています。
これは、カロリー制限を行うと体内のタンパク質が合成よりも異化に傾くことにより、筋肉の分解が亢進するためです。

減量期の除脂肪量の減少を抑えるアプローチとして、タンパク質摂取量を増やすことが推奨されています
この場合、カロリー制限に伴い総摂取カロリーを増やすことはできないため、PFCバランスのうち、P(Protein: タンパク質)の比重が増えることになります。

今回は若年男性を対象として、カロリー制限中の高タンパク質食が筋肉量の維持に貢献するのかを検証した論文を紹介します。

論文概要

出典

Roth, C., Rettenmaier, L., & Behringer, M. (2021). High-Protein Energy-Restriction: Effects on Body Composition, Contractile Properties, Mood and Sleep in Active Young College Students. Frontiers in Sports and Active Living, 3, 164.

方法
健康的な若年男性(体脂肪率が25%未満)を対象
筋肉量をもとにランダムに下記の2群に分類
※研究開始時の参加人数は35名であったが、最終的なデータ分析対象者は28名
・エネルギー制限群(Energy-restricted Group: ER)14名
・コントロール群(Control Group: CG)14名

実験期間はWeek0-Week6の合計7週間
対象者は、スマーフォンアプリ(MyfFitnessPal)での食事記録と体重計での体重測定を毎日実施

Week0:両群ともに45kcal/kgのエネルギーを摂取
Week1-Week6:
ERは30kcal/kgのエネルギーを摂取、CGは35kcal/kgのエネルギーを摂取
介入期間中は両群ともに高タンパク質食(2.8g/kg 除脂肪体重)を摂取
糖質と脂質の摂取量は対象者の好みに応じて自由
対象者は実験期間を通して普段の運動習慣を維持(両群ともに週当たりの身体活動量は400分程度)
※レジスタンストレーニング(筋トレ)の実施は不許可

測定項目は下記のとおり
身体組成:多周周波数生体インピーダンス解析
筋機能:筋収縮特性(Tensiomyography法)、筋の質(Myoton PROを利用)
睡眠:睡眠時間、睡眠の質(Pittsburgh Sleep Quality Index-Germanを利用)
心理調査:German Version of the Profile of MOOD States(POMS-G)を利用

結果
・体重、除脂肪体重、体脂肪率ともに時間×群の交互作用あり
→ERは体重(ER:-3.22kg、CG:;1.90kg)、除脂肪体重(ER:-1.49kg、CG:+0.68kg)、体脂肪率(ER:-1.94%、CG:+1.22%)が減少
→ERの体重減少の47%は除脂肪体重

・筋機能、睡眠時間は変化なし

・睡眠の質は両群ともに改善

・POMSのVigor(活気)は低下

解説

この論文は、若年男性を対象としてカロリー制限中の高タンパク質食が身体組成に及ぼす影響を検証しています。
しかし、コントロール群が通常の摂取カロリーに高タンパク質食を摂取するグループであったため、高タンパク質食を摂取せずにカロリー制限を行った場合に比べてどれだけ効果的であったのかという検証はできません。
得られた結果は、6週間の介入期間後に体重が約3kg減少したものの、そのうちの約半分は除脂肪体重の損失によるものでした。
したがって、若年男性の場合、高タンパク質食を摂取するのみでは、減量中の筋肉量を維持することは難しいと言えます。

この論文の対象者は身体活動レベルが比較的高かったため、カロリー制限中でもエネルギー摂取量は体重1kg当たり30kcalに設定されていました。
ただし、実験期間中は筋トレの実施は許されていませんでした。

筋トレは筋タンパクの合成を高める刺激になるため、減量期間中に筋肉量を維持するために推奨されています。
したがって、筋トレを実施していた場合、また違う結果になった可能性も考えられます。

1日当たりのエネルギー出納をどの程度マイナスにするのかによっても身体組成に及ぼす影響は異なります。
アスリートを対象とした研究(カロリー制限に加えて筋トレも実施)によると、急速減量群(-791kcal/日)では除脂肪体重は変化がなかったものの、緩速減量群(-469kcal/日)では除脂肪量は減量後に増加していました。

一方、今回の論文では推定されたエネルギーバランスは-535kcal/日でした。
対象者の特徴や筋トレの有無といった条件が異なるため一概には言えませんが、1日当たりのエネルギーバランスを-500kcal/日よりもマイルドにすることで、除脂肪量の減少という悪影響を軽減できるのかもしれません。

まとめ

たとえ高タンパク質食を摂取してもカロリー制限中だけで減量すると筋肉量は減るようだ