ナイトマッチの日は睡眠が損なわれる

はじめに

覚醒作用を持つカフェインは、スポーツパフォーマンスを高める働きがあります。

カフェインの血中濃度は、摂取後30-40分で最大となりますが、効果が半分になる半減期は摂取後おおよそ3-6時間です。
そのため、夕方以降にカフェインを摂取すると、ベッドや布団に入った際にもカフェインの効果が残っており、睡眠に悪影響を及ぼす可能性があります。
特に、ただでさえ身体的・精神的負荷が高い試合時にカフェインを活用すると、その晩の眠りが浅くなることは容易に想像できます。

今回は、プロラグビー選手のナイトマッチ時の睡眠データを測定したケーススタディを紹介します。

論文概要

出典

Caia, J., Halson, S. L., Holmberg, P. M., & Kelly, V. G. (2022). Does Caffeine Consumption Influence Postcompetition Sleep in Professional Rugby League Athletes? A Case Study. International journal of sports physiology and performance, 17(1), 126–129. https://doi.org/10.1123/ijspp.2020-0841

方法
15名のプロラグビー選手を対象

夜7時50分キックオフのナイトマッチに出場
試合前、試合中はカフェイン含有のサプリメントを自由に摂取できる状況
(サプリメントは2種類、1サーブ当たりのカフェイン量は約175mg、約100mg)

試合の前(1時間前)、後(30分後以内)に唾液サンプルでカフェイン濃度を測定

睡眠データは試合の前日、当日、翌日の三晩にわたり手首装着型の活動量計で測定

結果
■カフェイン濃度
試合前(2.1μg/mL)に比べて試合後(8.1μg/mL)で増加

■睡眠データ
就床時間:前後に比べて、試合当日に遅延

睡眠開始時間:前後に比べて、試合当日に遅延

起床時間:前日に比べて試合当日で早い

睡眠潜時:前日に比べて試合当日に増加

総就床時間:前後に比べて試合当日に短縮

総睡眠時間:前後に比べて試合当日に短縮

中途覚醒時間:統計学的有意差なし

睡眠効率:統計学的有意差なし

解説

このケーススタディは、プロラグビー選手はナイトマッチ当日の睡眠が損なわれたことを示しています。
当日のカフェイン摂取量を定量していないため、カフェインをどれぐらい摂っていたのかは不明ですが、唾液中のカフェイン濃度は試合後に増加していたため、多くの選手がスポーツパフォーマンス向上を目的として、カフェインを活用していたと推測できます。

論文の著者らは、カフェイン濃度と睡眠データとの相関関係が統計学的に有意でなかった結果をもとに、睡眠の乱れはカフェインだけでなく、投光照明、試合後のアルコール摂取、睡眠環境といったその他の要因も影響している可能性を指摘していました。

ナイトマッチの日は就床時間が遅くなったり、睡眠潜時が長くなったりすることを想定し、翌日の起床時間が遅くても済むように、スケジュールを調整することもコンディショニングとして大切です。

まとめ

ナイトマッチ後の睡眠は乱れやすい