徹夜明けでもカフェインを使えば持久系パフォーマンスは維持できる

はじめに

良質な睡眠は、健康やスポーツパフォーマンス向上のために必要不可欠です。
しかし、人生では時より睡眠を妨げられる厳しい局面に遭遇することがあります。

今年(2022年)発表されたある論文によると、一晩睡眠をとらなかったとしても、カフェインを活用することで持久系パフォーマンスが維持できるようです。
今回はその論文を紹介します。

論文概要

出典

Khcharem, A., Souissi, W., Masmoudi, L., & Sahnoun, Z. (2022). Repeated low-dose caffeine ingestion during a night of total sleep deprivation improves endurance performance and cognitive function in young recreational runners: A randomized, double-blind, placebo-controlled study. Chronobiology international, 39(9), 1268–1276. https://doi.org/10.1080/07420528.2022.2097089

※数値は平均値±標準偏差
方法
12名の男性一般ランナーを対象
対象者は普段同じような就寝起床リズムで生活
(就寝:23:00±00:30、起床:06:30±00:30)
全員が睡眠障害を有しておらず、カフェインの利用量も少なかった(70mg/日未満)

ダブルブラインドランダム化比較試験
本トライアルの前に各測定の慣れやトライアルの走行速度を決めるためのランニングテストを実施

本トライアルはカウンターバランスで4条件実施
1) ベースライン+プラセボ
2) ベースライン+カフェイン
3) 徹夜+プラセボ
4) 徹夜+カフェイン

ベースライン条件:22:30-07:00に睡眠
徹夜条件:眠ることは許されず、ビデオゲームやテレビ視聴などで一晩過ごす

カフェイン・プラセボの摂取量・摂取タイミング
ベースライン条件:07:30に6mg/kgのカフェインorプラセボ(スクロース)をカプセルで摂取
徹夜条件:3回(01:30、04:30、07:30)にわたり2mg/kgのカフェインorプラセボのカプセルを摂取

ランニングテストの30分前(08:30)と直後に認知テストを実施
ランニングテストは75%最高走行速度でオールアウトに至るまでの時間を計測
認知テストは、Digit cancellationとReaction timeを計測

結果
■ランニングパフォーマンス
ベースライン+プラセボ:38.75±9.58分
ベースライン+カフェイン:40.75±9.16分
徹夜+プラセボ:34.75±7.78分
徹夜+カフェイン:37.83±8.71分

ベースラインで比べると、カフェインによって5.2%向上
徹夜で比べると、カフェインによって8.9%向上

ベースライン+プラセボと徹夜+カフェインとの間に有意差なし

■Digit cancellation
ベースラインで比べると、カフェインによって8.6-10.2%向上
徹夜で比べると、カフェインによって4.5-6.4%向上

■Reaction time
ベースラインで比べると、カフェインによって5.5-7%向上
徹夜で比べると、カフェインによって6.9-7.1%向上

解説

この論文の主な知見は2つです。
1) 通常の睡眠から起床30分後に体重1kg当たり6mgのカフェインを摂ることで午前中の持久系パフォーマンスが5.2%向上する
2) 夜間から早朝にかけて体重1kg当たり2mgのカフェインを3回摂ることで、徹夜明けの持久系パフォーマンスの低下が抑制できる

このうち、1) については、カフェインによる持久系パフォーマンス向上を認めた多くの先行研究の結果を支持するものです。

一方、2) については、新しい知見です。
この知見を踏まえると、カフェインを上手く活用することで、徹夜明けでも火事場の馬鹿力的に乗り切れるときがありそうです。
しかし、睡眠不足+カフェインの組み合わせは、カフェインの単独利用に比べると、その後のリカバリーや睡眠、食生活にマイナスの影響を与える可能性が高まりそうです。
したがって、普段は良質な睡眠を確保することを優先すべきことに変わりありません。

まとめ

徹夜をしてもカフェインを使うと持久系パフォーマンスは維持できる