加重プランクと6RMバックスクワットの体幹筋群筋活動の比較

2021年8月17日

はじめに

体幹を鍛える目的として、プランクやサイドプランク、ブリッジといった動きの少ないエクササイズが流行っています。
これらのエクササイズは一般に「体幹トレーニング」「コアトレーニング」と呼ばれています。
今回は「体幹トレーニング」と表現します。

実のところ体幹トレーニングは、日常生活やスポーツ活動の動作と比べると筋収縮形態や姿勢、四肢の関節動作が異なるため、トレーニング効果の転移が起こりにくいと言われています。

また、いくつかの研究によると、スクワットやデットリフトといったコンパウンド種目を高重量で実施すると、体幹筋群の筋活動レベルは高くなることも示されています。
これは、脊柱に負荷がかかる状態で適切なフォームで実施するためには体幹筋群の筋活動が不可欠であるためです。

今回は筋トレ経験を持つ男性トレーニーを対象として、体重の20%の重量を加えたプランクとバックスクワットを実施した際の体幹筋群の筋活動を比較した論文を紹介します。

論文概要

出典

van den Tillaar, R., & Saeterbakken, A. H. (2018). Comparison of Core Muscle Activation between a Prone Bridge and 6-RM Back Squats. Journal of human kinetics, 62, 43–53. https://doi.org/10.1515/hukin-2017-0176

方法
2年以上のレジスタンストレーニングの経験を有する12名の男性を対象
(年齢:23.5歳、体重:87.8 kg、身長:1.81 m、数値は平均値)

対象者は下記のエクササイズを実施
・6RMの重量を用いたバックスクワット(パラレルスクワットよりも深く実施)を限界まで実施×2セット

・体重の20%の重量(プレート)を下背部に載せた状態でプローンブリッジ(プランク)を限界まで実施

表面筋電図を用いて各エクササイズ中の腹直筋、外腹斜筋、脊柱起立筋の筋活動を測定

結果
※6RMバックスクワットの筋活動は、セット間の級内相関係数が高かったため、2セットのデータを平均して処理

・6RMバックスクワットの重量は103kg、プランクの持続時間は92.8秒(平均値)

・各エクササイズの筋活動の平均値
→腹直筋:有意差なし
→脊柱起立筋:6RMバックスクワット>20%@体重プランク
→外腹斜筋:有意差なし

・各エクササイズの筋活動の経時変化(序盤、中盤、終盤で比較)
→6RMバックスクワット:腹直筋は序盤に比べて中盤で増加、脊柱起立筋は前半に比べ中盤、中盤に比べ終盤で増加、外腹斜筋は変化なし
→20%@体重プランク:外腹斜筋は序盤に比べて中盤で増加、腹直筋、脊柱起立筋は変化なし

解説

この論文では、加重なしのプランクでは体幹筋群ではなく、肘関節・肩関節周囲の痛みによってパフォーマンスが制限されやすいことを踏まえ、体重の20%の重量を用いたプランクを採用しています。

得られた結果は、6RMバックスクワットと加重プランクを比較した場合、体幹前面筋群(腹直筋、腹斜筋)の筋活動には差がなかったものの、体幹後面筋(脊柱起立筋)の筋活動は6RMバックスクワットで高かったことを示しています。
この結果は、体幹筋群をバランスよく強化するには6RMバックスクワットの方が優れたエクササイズであることを示しています。

高重量を扱うバックスクワットでは下降・上昇局面を通じて適切な姿勢を維持するには体幹筋群が漫勉なく活動する必要があります。
たとえば脊柱を伸展する働きのある脊柱起立筋の活動レベルが弱い場合、体幹は過度に丸まってしまうため下半身の筋肉が適切に強化できないばかりか、腰背部へのストレスが高まり傷害発生のリスクも高めます。

筋電図計測による筋活動レベルのみでエクササイズの優劣を決めるのには限界がありますが、動作形態を踏まえてもバックスクワットの方が日常生活やスポーツ活動へのトレーニング効果の転移が起きやすいと考えられます。
また、両エクササイズを比較した場合、大腿四頭筋、大殿筋、ハムストリングスといった下半身の大きな筋肉に対するトレーニング効果は、バックスクワットで高くなります。
したがって、スポーツパフォーマンス向上を目的としたアスリートの場合、体幹トレーニングよりも、高重量のスクワットを実施した方が時間効率の良いアプローチだと言えます。

ただし、トレーニングを始めたばかりの初心者が高重量を用いたバックスクワットを適切なフォームで実施するのは難しいです。
そのようなケースでは、プランクも有効なトレーニングであるに違いありません。

まとめ

プランクよりバックスクワットの方が体幹筋群を満遍なく鍛えられる