高齢男性のコンカレントトレーニングでの筋トレは、疲労困憊まで行う必要はない

はじめに

コンカレントトレーニング(同時トレーニング)とは、レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)と有酸素性トレーニングを一つのトレーニング計画に組みこむことです。

高齢者を対象としたコンカレントトレーニングは総合的に体力指標を高められることから、より健康的になれる可能性を秘めていますリンク)。
一方で各トレーニングの負荷を不必要に高めてしまうと、過度に疲労が蓄積してしまい、オーバートレーニングに陥ったり、トレーニング効果が損なわれる可能性もあります
特に加齢に伴い回復能力が減少している高齢者では、負荷の設定は慎重に決める必要があります

今回は高齢男性を対象として、コンカレントトレーニングにおけるレジスタンストレーニングの負荷の違いが最大筋力、筋肥大、筋パワーに及ぼす影響を検証した論文を紹介します。

論文概要

出典
da Silva LXN, Teodoro JL, Menger E, Lopez P, Grazioli R, Farinha J, Moraes K, Bottaro M, Pinto RS, Izquierdo M, Cadore EL. Repetitions to failure versus not to failure during concurrent training in healthy elderly men: A randomized clinical trial. Exp Gerontol. 2018 Jul 15;108:18-27. doi: 10.1016/j.exger.2018.03.017. Epub 2018 Mar 22. PMID: 29577974.

方法
65名の高齢男性(平均年齢66歳)をランダムに下記の3群に分類
※実験期間中の離脱者等により、最終的には52名が完遂

・短縮性収縮局面を疲労困憊まで実施する群
→Repetitions until concentric failure: RFG
・短縮性収縮を疲労困憊まで実施しない群
→Repetitions not to failure:NFG
・短縮性収縮を疲労困憊まで実施しないが、RFGと同じ総量を実施する群
→Repetitions not to failure, but with equalized total strength training volume: ENFG

トレーニング内容は下記のとおり
期間:12週間
頻度:2回/週(毎回のセッションは、レジスタンストレーニング、有酸素性トレーニングの順に実施)
種目:レッグプレス、レッグエクステンション
強度:60-75%1RM
反復回数:RFGは疲労困憊まで、NFG・ENFGはRFGの約半分
セット数:RFG、NFGは同じ、ENFGはRFG、NFGの2倍
→つまり、総ボリュームはRFGとENFGで同等

上記のほか、ベンチプレス、シーテッドロー、体幹前面・体幹後面のエクササイズを疲労困憊に至らない範囲の反復回数で実施
レジスタンストレーニング終了後、60-75%最高心拍数の強度で20-30分の有酸素性トレーニングをトレッドミルで実施

トレーニング期間の前後で下記の項目を測定
レッグプレス・ニーエクステンションの1RM挙上重量
膝関節伸展等尺性最大収縮時のトルク
トルクの立ち上がり率
最大神経筋活動
大腿四頭筋の筋厚(筋肥大の指標)
固有筋力(右足の1RMの挙上重量/大腿四頭筋の筋厚)
ジャンプパフォーマンス
最高酸素摂取量

結果
・レッグプレス・ニーエクステンションの1RM挙上重量、ジャンプパフォーマンス、トルクの立ち上がり率、固有筋力、最大神経筋活動は、3群ともに同程度に改善
・大腿四頭筋の筋厚は、RFGとENFGのみ増加

解説

この論文の主な発見は、高齢男性のコンカレントトレーニングにおけるレジスタンストレーニングでは、疲労困憊(repetition to failure)に至る前に各セットを終えたとしても、最大筋力、筋パワー、最大神経筋活動は発達することです。
また、疲労困憊に至るか否かに関わらず、総量が一緒であれば疲労困憊に至るまで実施した場合と同様の筋肥大効果が認められることも重要な知見です。

疲労困憊に至るまで実施するレジスタンストレーニングは、血圧や心拍数が高まりやすいため、心臓血管系に強い刺激がかかります。
高齢者は高血圧などを有していることも多いことを踏まえると、あえて疲労困憊まで追い込ませるリスクをとる必要はないと言えます。

また、NFGでは筋肥大こそ起きなかったものの、日常生活機能と密接に関係する下肢の筋力や筋パワーには改善が認められたことから、比較的少量のボリュームであっても十分な効果が期待できると考えられます。

なお、コンカレントトレーニングにおいても、1回のセッション内において両方のトレーニングを実施する必要はなく、例えば月曜日は筋トレ、水曜日はランニングといったように別日に実施する場合もあります。

まとめ

男性高齢者が有酸素性トレーニングと筋力トレーニングを同時期に行う場合、筋力トレーニングは疲労困憊まで追い込まなくて良い