両側性・片側性のローイング系レジスタンストレーニング中の体幹筋活動

はじめに

当サイトではこれまでにレジスタンストレーニング中の筋活動に関する論文を紹介してきました。

今回は広背筋や大円筋といった背中の筋肉(肩関節伸展筋群)を鍛えるために行われるローイング種目を対象として、体幹筋群の筋活動を比較した論文を紹介します。

紹介する論文では、3つのローイング種目を片側性(片手)、両側性(両手)で実施した際の脊柱起立筋、多裂筋、外腹斜筋、腹直筋の筋活動を評価しています。

論文概要

出典

Saeterbakken, A., Andersen, V., Brudeseth, A., Lund, H., & Fimland, M. S. (2015). The Effect of Performing Bi- and Unilateral Row Exercises on Core Muscle Activation. International journal of sports medicine, 36(11), 900–905. https://doi.org/10.1055/s-0034-1398646

方法
2年以上のレジスタンストレーニング経験を有する15名の男性を対象(年齢:26歳、体重:81kg、身長:1.81m)

対象種目は下記の6試行(3種目×2パフォーマンス)
ベントオーバーロー両側性(バーベル)
ベントオーバーロー片側性(ダンベル)
ケーブルロー両側性(ケーブルマシン)
ケーブルロー片側性(ケーブルマシン)
シーテッドロー両側性(マシン)
シーテッドロー片側性(マシン)

全試行6RM(最大で6回挙上できる重量)で6回実施
股関節屈曲角度90度を保った状態で実施
片側性エクササイズは反対側の手を腹部にあてた状態を維持し体幹の回旋動作が入らないようにした

表面筋電図を用いて、脊柱起立筋、多裂筋、外腹斜筋、腹直筋の筋活動を定量

結果
・脊柱起立筋
→ベントオーバーロー両側性>シーテッドロー両側性
→ベントオーバーロー片側性>ケーブルロー片側性・シーテッドロー片側性
→どの種目も両側性>片側性

・多裂筋
→ケーブルローとシーテッドローは両側性>片側性
→ベントオーバーロー片側性>ケーブルロー片側性・シーテッドロー片側性

・外腹斜筋
→どの種目も片側性>両側性

・腹直筋
→有意差なし

解説

この論文の主な発見は次の3つです。
1) 体幹伸展筋群(脊柱起立筋、多裂筋)の筋活動はシーテッドローよりベントオーバーローで高い
2) 外腹斜筋の筋活動はどの種目でも両側性より片側性で高い
3) 体幹伸展筋群の筋活動は種目に関わらず片側性より両側性で高い

1)については、ベントオーバーローは上半身を前に倒したまま、両足のみが地面についた状態で実施するため、サポートの多いケーブルロー(両足、臀部)、マシンロー(両足、臀部、胸部)と比べると、腰背部の適切な姿勢を保つために体幹伸展筋群の活動レベルを高める必要があったからだと考えられます。

2) については、片側性種目では体幹に回旋方向の負荷がかかるため、その負荷に抵抗するために外腹斜筋の活動レベルを高める必要があったからだと考えられます。

3)については、両側性の方が扱う重量が増えるため、その重量に屈せずに腰背部の適切な姿勢を保つためには体幹伸展筋群の活動レベルを高める必要があったからだと考えられます。

この論文は、プランクやブリッジといったいわゆる体幹トレーニング種目の筋活動レベルとの比較をしていない上、最大等尺性収縮時の筋活動レベルをもとにした正規化(相対評価)もしていません。
したがって、体幹を鍛える効果がどれだけ期待あるのかを言及するのに限界がありますが、体幹伸展筋群の強化を狙う場合はベントオーバーロー両側性、体幹回旋筋群の強化を狙う場合は片側性のエクササイズを選択することが有効な可能性があります。

まとめ

背中を鍛えるローイング系種目は種目や両側性・片側性を使い分けることで体幹を満遍なく効果的に鍛えることができる