筋トレのセット数が高齢者女性の体組成や血液マーカーに与える影響

はじめに

高齢者における体脂肪(特に腹部脂肪)の過度な蓄積は、糖尿病や動脈硬化の危険因子となるばかりか、日常生活機能の低下とも密接に関係します。
また過度な脂肪蓄積は慢性炎症によって様々な疾病の引き金にもなります

このような背景から近年、高齢者の体脂肪を適切なレベルにまで落とすためのトレーニング方法に関する研究が盛んに行われています。

今回は、筋トレ経験のない高齢者女性を対象として、筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)のセット数の違いが体組成や血液マーカーに及ぼす影響を検証した論文を紹介します。

論文概要

出典
Cunha, P. M., Tomeleri, C. M., Nascimento, M. A., Mayhew, J. L., Fungari, E., Cyrino, L. T., Barbosa, D. S., Venturini, D., & Cyrino, E. S. (2021). Comparision of Low and High Volume of Resistance Training on Body Fat and Blood Biomarkers in Untrained Older Women: A Randomized Clinical Trial. Journal of strength and conditioning research, 35(1), 1–8. https://doi.org/10.1519/JSC.0000000000003245

方法
レジスタンストレーニングの経験や定期的な運動習慣がない60歳以上の高齢女性をランダムに3群に分類
・低ボリューム群(Low volume: LV):最終的な参加者19名
・高ボリューム群(high volume: HV):最終的な参加者18名
・コントロール群(Control group: CG):最終的な参加者18名

実験期間は16週間
最初(1-2週)と最後(15-16週)の2週は、トレーニングへの慣れやプレ・ポスト測定
3-14週は週3回の頻度でトレーニング

トレーニング内容は下記のとおり
・種目:8種目(チェストプレスマシン、ホリゾンタルレッグプレスマシン、セーテッドローマシン、ニーエクステンションマシン、プリーチャーカール、レッグカールマシン、トライセップスプッシュダウンマシン、シーテッドカーフレイズマシン)
・反復回数:10-15回
・収縮スピード:1/2(短縮/伸張)
・セット数:1セット(LV)、3セット(HV、セット間の休息時間1-2分)
・種目間の休息時間:2-3分

プレ・ポストの測定項目は体組成、血液マーカー

結果
体脂肪率の低下:LV・HVともに低下したが、HVでより低下
体幹の脂肪量:HVのみ低下
血液マーカー:トリグリセリド・VLDL-c・血糖値・C反応性蛋白の低下はLVに比べてHVで顕著

解説

この研究では、高齢女性を対象として低ボリューム(1セット)と高ボリューム(3セット)のレジスタンストレーニングを実施させたところ、高ボリュームを実施したグループの身体組成や血液マーカーが顕著に改善しました

当サイトではこれまでに若年女性を対象とした論文を引用し、週当たりのセットが増えたとしても、筋力や筋肥大には必ずしも好影響を及ぼすとは限らないことを述べました(リンク)。

一方、今回の論文では身体組成や血液マーカーについては、セット数が多い方で良い効果が得られています。
二つの研究は対象者の年齢やトレーニング歴などが異なる点を忘れてはいけませんが、トレーニングの目的によって最適なセット数は異なることを示唆しています。
つまり、トレーニングの目的が筋肥大あるいは筋力アップの場合と、身体組成や血液マーカーの改善の場合では、望ましいセット数は時に異なるということです。

冷静に考えると、これは極めて当たり前のことです。
しかし、実際にトレーニングを継続していると、目的が疎かになってしまうことが時にあります。
トレーニング効果を最大化するためには、常に目的を念頭に置いた上で、その効果を左右する各変数を決めることを忘れてはいけません。

なお、運動習慣のない高齢者がいきなり高ボリュームのレジスタンストレーニングを実施することは、過度な疲労による悪影響も考えられます。
低ボリュームのグループでも多くの指標で統計学的にもトレーニング効果が認められていることを踏まえると、最初は1セットのみを実施し、慣れてきたら3セットに負荷を上げるというアプローチが現実的かと思います。

まとめ

高齢者女性の体組成や血液マーカーを改善するレジスタンストレーニングのセット数は1セットよりも3セット