持久系サイクリストは競技シーズン中にもストレングストレーニングを続けた方が良い

はじめに

これまで繰り返し説明しているとおり、持久系アスリートがストレングストレーニングを行うと、エコノミーの改善と最高出力の向上が起こり、結果として持久系パフォーマンスが向上します。

持久系スポーツ種目の中には、競技シーズンに入ると、頻繁にレースに出場することが求められるものもあります。
この場合、レースによる高い負荷などとの兼ね合いによって、ストレングストレーニングを控える人もいます。

過去に紹介した論文によると、4-6週間であれば、ストレングストレーニングを一時的に辞めても、一度獲得した効果が完全消失することはないようです。

持久系アスリートにおけるストレングストレーニングの効果は脱トレーニング後もしばらく持続する可能性

持久系アスリートにおけるストレングストレーニングの効果は脱トレーニング後もしばらく持続する可能性~その2~

 

今回紹介する論文では、エリートサイクリストを対象として、25週間のストレングストレーニング後に8週間、ストレングストレーニングを中止することが筋力およびサイクリングパフォーマンスに及ぼす影響を検証しています。

論文概要

出典

Rønnestad, B. R., Hansen, J., Hollan, I., Spencer, M., & Ellefsen, S. (2016). Impairment of Performance Variables After In-Season Strength-Training Cessation in Elite Cyclists. International journal of sports physiology and performance, 11(6), 727–735. https://doi.org/10.1123/ijspp.2015-0372

方法
14名のサイクリスト(うち全国レベル6名、国際レベル8名)を対象
対象者はランダムに下記の2群に割り当て
・実験群(ストレングストレーニングを25週間実施し、8週間実施しないグループ)
・対照群(ストレングストレーニングを一切実施しないグループ)

■実験デザイン
全33週間(準備期:25週間、競技期:8週間)
実験群は準備期25週間のみストレングストレーニングを実施
準備期前、準備期後、競技期後に各種測定を実施

■ストレングストレーニングの概要
最初の10週間は2回/週の頻度で実施(セット数:3、強度:4-10RM、休息時間:2分)
残りの15週間はおよそ8日に1回の頻度で実施(セット数:3、強度:80-85RM、反復回数:5回、休息時間:2分、コンセントリック局面を最大努力で)
種目はハーフスクワット、片脚レッグプレス、立位での片脚股関節伸展、カーフレイズ

持久系トレーニングの変数に群間差なし

■評価・テスト項目
形態・身体組成(二重エネルギーX線吸収法)
アイソメトリックハーフスクワットの最大フォース
スクワットジャンプの跳躍高
ウインゲートテスト(30秒オールアウト形式)
有酸素性の生理学的指標・パフォーマンス(漸増負荷試験)

統計学的な分析はMagnitude-Based Inferencesで実施

結果
体重、下半身の除脂肪量は両群ともに意味のある変化なし

準備期間後のハーフスクワットの最大フォース、スクワットジャンプ、最大有酸素性パワー、4mmol/Lのパワー、ウインゲートテストの平均パワーに対する変化は、対照群に比べて実験群で優れていた

競技期間後のそれらの多くの変化は、対照群に比べて実験群で劣っていた

準備期前と競技後との変化を比べると、ほとんどが「Unclear」であり、実験群が準備期で獲得した恩恵は失っていた

解説

この論文は、統計学的な分析をMagnitude-Based Inferencesで行っていること、そして群内の変化ではなく、群間の変化をもとに分析と考察を展開していることから、結果の解釈に注意が必要です。

実際、一般に向上すると言われているエコノミー(この論文では、グロス効率)をみて見ると、実験群であっても、準備期後に若干悪くなっています。

この論文の主な知見は、エリートサイクリストにおいて準備期を通して獲得したストレングストレーニングによる適応効果は、競技期の最初の8週間で失われてしまったということです。

過去に紹介した研究との相違の理由がストレングストレーニングをやめた期間の差なのか、競技レベルなのかは分かりませんが、エリート持久系アスリートにおいては、競技期においても、ストレングストレーニングは続けた方が良さそうです。

まとめ

エリート持久系サイクリストは競技期にストレングストレーニングをやめるとよくない