Well-trainedなランナーのトレーニング強度配分は、ピラミッド型からポラライズド型に移行するパターンで優れたパフォーマンス向上が期待

はじめに

持久系アスリートおよび持久系スポーツの愛好家にとって、トレーニング強度の配分の最適化は関心の高いテーマです。

これまでの研究によると、個々の研究によって多少の違いはあれど、ピラミッド型(ゾーン1>ゾーン2>ゾーン3)もしくはポラライズド型(ゾーン1>ゾーン3>ゾーン2)のトレーニング戦略が持久系パフォーマンスの改善に効果的だとされています。

今回紹介する論文では、
ピラミッド型でやり続ける、
ポラライズド型でやり続ける、
ピラミッド型からポラライズド型に移行する、
ポラライズド型からピラミッド型に移行する、
という4つのトレーニング戦略の効果を比較しています。

論文概要

出典

Filipas, L., Bonato, M., Gallo, G., & Codella, R. (2022). Effects of 16 weeks of pyramidal and polarized training intensity distributions in well-trained endurance runners. Scandinavian journal of medicine & science in sports, 32(3), 498–511. https://doi.org/10.1111/sms.14101

方法
4-armed parallel group randomized controlled trial design
VO2peakが60ml/kg/min超えなどの一定の選択基準をクリアした60名を分析対象

トレーニング強度の定義は次のとおり
ゾーン1:第一の換気性閾値未満
ゾーン2:第一の換気性閾値~第二の換気性閾値
ゾーン3:第三の換気性閾値超え

■実験デザイン
介入期前に6週間の期間あり
その期間では、量が250-350分/週でゾーン2・3の高強度セッションは週1回のみに制限
介入期は12月から3月にかけての16週間(8週間×2)
3週@高負荷-1週@低負荷(70%)のサイクルを繰り返す形式

対象者は下記の4群に割り当て
ピラミッド型でやり続ける(PYR)
ポラライズド型でやり続ける(POL)
ピラミッド型からポラライズド型に移行する(PYR→POL)
ポラライズド型からピラミッド型に移行する(POL→PYR)

トレーニング負荷(Luciaの方法で定量)は群間差が生じないようにコントロール

16週間の前、8週間経過後、16週間経過後に5kmタイムトライアル、漸増負荷試験などを実施

結果
トレーニング強度の配分とトレーニング負荷の分析はTime in Zone法で実施
狙った通りになっていることを確認

相対値の最高酸素摂取量、血中乳酸濃度が2mmol/Lのランニングスピード、血中乳酸濃度が4mmol/Lのランニングスピード、5kmのタイムトライアルの成績は群×時間の交互作用あり
PYR→POLが最大の改善

解説

この論文は、Well-trainedな男性ランナーを対象とした場合、16週間のトレーニング期間のうち、前半をピラミッド型、後半をポラライズド型でトレーニングした場合、最もトレーニング効果が高かったことを報告しています。

論文の著者らは、その理由についてはあまり深く考察していませんでしたが、もっとも可能性の高い原因として、「ピーキングのプロセスにおけるトレーニング強度の役割」を挙げています。

この論文の緒言で、先行研究を引用した上で、次の言及がされていました。

The concept of training intensity distribution (TID) is defined as the amount of time that the athlete spends in different zones of training intensity during exercise.

引用:Stöggl, T., & Sperlich, B. (2014). Polarized training has greater impact on key endurance variables than threshold, high intensity, or high volume training. Frontiers in physiology, 5, 33. https://doi.org/10.3389/fphys.2014.00033

この「amount of time」という部分はとても大切です。
トレーニング強度の配分というのは、分母、分子ともに時間が基本であり、距離ではありません。

まとめ

ある程度鍛えられたランナーは低強度のボリュームを保ったままで、中強度から高強度にシフトすると良いだろう