カロリー制限だけでも体重は落ちるが、メタボ改善には短時間でも運動すべき

2021年9月18日

はじめに

メタボリックシンドローム(メタボ)とは内臓脂肪の過剰蓄積に加え、高血圧、高血糖、脂質代謝異常が組み合わさった状態のことで、心血管疾患や糖尿病のリスクを高めます

メタボの人は中長期にわたり正のエネルギーバランス(摂取カロリー>消費カロリー)で過ごした結果、体脂肪が過剰に蓄積された場合が多いです。
そのためメタボ解消のためには、負のエネルギーバランス(摂取カロリー<消費カロリー)を作ることが必要です。

負のエネルギーバランスを作るためには、食事制限によって摂取カロリーを減らすか、運動や身体活動量を増やすことによって消費カロリーを増やす、あるいは両者を組み合わせるアプローチがあります。
このうちメタボ解消を目的とした運動としては、従来では低-中強度の持続的な有酸素運動が用いられることが一般的でした。
しかし、運動が続かない人の理由として「時間の欠如」を挙げる今日では、短時間運動の有効性に関する研究が進んでいます。

今回紹介する論文は、メタボな人を対象として、運動強度の異なる2つの短時間インターバルトレーニング(加えて食事制限も実施)の効果を検証しています。

論文概要

出典

Reljic, D., Frenk, F., Herrmann, H. J., Neurath, M. F., & Zopf, Y. (2021). Effects of very low volume high intensity versus moderate intensity interval training in obese metabolic syndrome patients: a randomized controlled study. Scientific reports, 11(1), 2836. https://doi.org/10.1038/s41598-021-82372-4

方法
実験への参加基準は下記のとおり
・18歳以上
・肥満(BMIが30kg/m2以上)
・ウエスト周径囲が女性で88cm以上、男性で102cm以上
・二つ以上の心臓血管代謝系の異常を有している(高血圧、脂質異常、高血糖)
・座りがちな生活習慣

研究開始時で163名が登録、ランダム化の時点で154名、その後、参加基準や実験期間中のドロップアウト等により最終的な分析対象者は87名
参加者はランダムに下記の3群に割り当て
・コントロール群(CON)
・中強度インターバルトレーニング群(MIIT)
・高強度インターバルトレーニング群(HIIT)

対象者は研究参加者時に登録栄養士と面談を行い、日々のエネルギーバランスが-500kcalとなるような栄養戦略についてアドバイスを受けた

トレーニングの詳細
期間:12週間
頻度:2回/週
様式:自転車エルゴメーター
内容:各群ともに14分/回で構成
HIIT群→2分@W-up、5×(1分@80-95%HRmax-1分@低強度)、3分@C-down
MIIT群→2分@W-up、5×(1分@65-80%HRmax-1分@低強度)、3分@C-down

トレーニング期間前後の測定項目は下記のとおり
・血圧

・血液プロフィール

・形態・身体組成

・メタボリックシンドロームのスコア(性別にウエスト周径囲、平均動脈圧、血糖値、トリグリセリド、HDKコレステロールをもとに算出)

・全身持久力(最大酸素摂取量、最大パワー(Wmax)、換気性閾値など)

・主観的指標(健康関連のQoLスコア)

・エネルギー摂取量、タンパク質・脂質・糖質の摂取量

結果
・体重は3群ともに減少(CON:-2.8kg、MIIT:-2.0kg、HIIT:-3.9kg)

・体脂肪量、ウエスト周径囲は群×時間の交互作用あり
→ウエスト周径囲はCONよりHIITで顕著な現象(CON:110.3cm→109.3cm、HIIT:117.2cm→110.8cm)

・摂取エネルギー、脂質・糖質の摂取量に時間の主効果あり
→3群ともに摂取エネルギーは減少したが、統計学的に有意だったのはCONのみ(-463kcal/day)

・最大酸素摂取量(L/min)、最大酸素摂取量(ml/kg/min)、Wmax(W)、Wmax(W/kg)、換気性閾値のパワー(W)は時間×群の交互作用あり
→最大酸素摂取量(L/min)はHIITがMIIT・CONに比べて顕著に増加、またMIITはCONに比べて顕著に増加
→最大酸素摂取量(ml/kg/min)はHIITがCONに比べて顕著に増加、またMIITはCONに比べて顕著に増加
→Wmax(W)、換気性閾値のパワーはHIITがMIIT・CONに比べて顕著に増加、またMIITはCONに比べて顕著に増加
→CONは全身持久力の指標で有意に改善した項目なし

・収縮期血圧、拡張期血圧、平均動脈圧、メタボリックシンドロームのスコアに時間×群の交互作用あり
→血圧はHIIT・MIITがCONに比べて顕著に改善
→メタボリックシンドロームのスコアはHIITがCONに比べて顕著に改善

・健康関連のQoLスコアはHIIT、MIITで改善、CONは変化なし

解説

この論文は、メタボな人を対象とした場合、食事制限のみでも体重は減るものの、メタボに関係する指標や全身持久力、主観的な健康度は運動を実施したグループでしか改善しなかったことを示しています。

全身持久力については、運動を実施したグループ間での差も認められ、高強度で実施したグループで顕著な向上が認められました。
またウエスト周径囲も高強度で実施したグループで減少幅が顕著な傾向がありました(HIIT:-6.4cm、MIIT:-3.7cm、CON:-1cm)。

近年、高強度トレーニングが内臓脂肪を選択的に減少させる可能性について関心が集まっています。仮にそれが真実だとすると、考えられる原因としては、高強度運動によるカテコールアミンや成長ホルモンといったホルモン分泌の亢進、運動後のエネルギー消費量(運動後過剰酸素摂取量)の増加、食欲への影響などが考えられます。

この研究で行われた運動は、ウォーミングアップやクーリングダウンを含めて1回14分で行える上、メインセッションも1分の高強度・中強度運動と1分の休息を反復する形式であったため、一般的なインターバルトレーニング(高強度・中強度が3分程度)や最大努力が求められるスプリントインターバルトレーニングよりも実施するための敷居が低いと考えられます。

1回14分、週2回であれば、「時間の欠如」を言い訳にはできない気がします。
それでも現実には、メタボな人が運動を継続するのが難しいです。
運動をしない本当の理由は「時間の欠如」以外にあるのかもしれません。

まとめ

メタボ改善には短時間でも高強度運動を