持久系運動の糖質ジェルの摂取頻度と血糖値、パフォーマンス

はじめに

およそ90分以上の持久系スポーツでは、競技前および競技中の糖質補給がパフォーマンス向上に寄与します。

当サイトでも、フルマラソンの出場者を対象として、糖質補給を最適化することで、タイムが約10分短縮できる可能性を示した論文を紹介しました。

糖質補給が持久系パフォーマンスに有益なことは確実な一方で、摂取頻度など細かい条件が生理学応答やパフォーマンスにどれぐらい影響するのかについて調べた研究は不十分です。
今回は、サイクリストを対象として、糖質ジェルの摂取頻度が持久系運動の生理応答およびパフォーマンスに及ぼす影響を検証した論文を紹介します。

論文概要

出典

Kozlowski, K. F., Ferrentino-DePriest, A., & Cerny, F. (2021). Effects of Energy Gel Ingestion on Blood Glucose, Lactate, and Performance Measures During Prolonged Cycling. Journal of strength and conditioning research, 35(11), 3111–3119. https://doi.org/10.1519/JSC.0000000000003297

方法
10名のサイクリスト(男女比1:1)を対象
対象者は事前テスト(最大酸素摂取量の測定)を行った後に3条件のトライアルをランダム化クロスオーバーデザインで実施
運動様式はサイクリング(自転車エルゴメーター)

全条件で同じ糖質ジェルを利用
(エネルギー:100kcal、糖質:25g、フルクトース+マルトデキストリン)
糖質ジェルの販売メーカーは、運動15分前、運動中は45分に1回の摂取を推奨

・条件1
運動15分前、以降は30分ごとに摂取(15分、45分、75分)
・条件2
運動15分前、運動開始後は45分ごとに摂取(45分、90分)
・条件13
運動15分前、運動開始後はなし
※全条件ともに、水は自由に摂取可

トライアルでは70%最大酸素摂取量の強度で2時間漕ぎ、15分のタイムトライアルを実施
血中乳酸、血糖値、呼吸交換比、主観的運動強度は30分ごとに測定
このうち、血中乳酸、血糖値はタイムトライアル終了直後にも測定

結果
数値は平均値

■血糖値(単位:mg/dl)
時間×条件の交互作用あり
以下は0分、30分、60分、90分、120分、タイムトライアル後の数値
条件1:135.7、121.2、125.5、127.5、102.0、102.6
条件2:131.5、112.2、127.6、111.3、113.0、104.7
条件3:132.6、112.7、102.8、102.2、100、96.5

スタート前の数値は同等レベル
条件1:90分までは一定で120分、タイムトライアル後に減少
条件2:条件1に比べると変動が大きく、最初の90分は条件1に比べても低め
条件3:運動開始以降減少し続ける

■血中乳酸
時間による主効果あり
全条件ともに0分からタイムトライアル後にかけて増加傾向

■主観的運動強度
時間×条件の交互作用あり
全条件で30分以降に増加
条件3は条件1に比べると90分、120分で高値

■タイムトライアル
条件1:7.56km
条件2:7.16km
条件3:6.69km

条件1・2と条件3で有意差あり
条件1と条件2は中程度の効果量の差があり(有意差なし)

解説

この論文は、サイクリストを対象として、2時間の一定強度漕後に15分間のタイムトライアルを行わせた結果、メーカーが推奨する摂取頻度よりも高頻度に摂取することで、パフォーマンスが若干向上する可能性を示しています。

持久系運動中に摂取した糖質ジェルをエネルギーとして利用することが出来れば、筋グリコーゲンの節約に繋がるため、運動終盤の高強度パフォーマンス発揮時に貢献すると考えられます。
そして、この論文の条件1、条件2のパフォーマンスが優れていたのも、こういった影響が関与していたと考えられます。

条件1の血糖値が120分、タイムトライアル後に減少傾向かつ120分時点では条件2よりも低い理由は、最後の摂取タイミングが影響していると考えられます。
具体的には、条件2は最後の摂取が90分だったのに対し、条件1は75分でした。
条件1は30分ごとなのだから、105分にも摂取した方がより面白い(有意義な)結果が得られたような気がします。

この論文からも示唆されている通り、メーカー側が特定の摂取頻度を推奨していたとしても、エビデンスに基づいていないこともあります。
また、沢山糖質ジェルを摂ってくれた方が売上につながることを踏まえると、メーカー側があえて控え目な推奨をする理由もわかりませんが、そもそもいい加減な商売なのかもしれません。

まとめ

持久系運動中に糖質ジェルを摂取すると血糖値の減少を防げる